通り雨 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 一つのけじめでと言ってみる

 生温かさの震える夜に
 はなうた混じりに酔いどれた
 愚者の額を濡らしていく通り雨

 無慈悲に凍てる冷たさで
 街の灯りを縫いとっていく

 この雨に濡れて行きたや
 貸してもらった雨傘を
 駅舎の椅子に置き去りにして

 街角を曲がれば新しい季節が
 鮮やかに笑っているに違いない今日の夜

 僕はまだまっすぐに歩きたかった