雨あがり | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 冷たい雨が激しく降った
 その雨上がり
 奇妙に生暖かい風がぬるぬると
 木々や電柱に絡みつく
 そのたびごとに
 誰かが悲鳴を上げる

 混乱する人の思いと
 困惑する社会の中で
 自らの生きゆく先を
 束の間の稲妻の中に見て
 胸わなないてやまぬ夜
 
 酔った者が嘔吐するに似て
 私はもう少しで意識を
 自分の意識を吐き出しそうになる
 ああ意識だけではない
 いっそ存在することをも吐き出せば
 自分を黙らせることができるだろうに

 そうなってやっと
 蛻(もぬけ)の殻の有り様の
 私は新しい生を生きられるのだ
 意味もなくうわ滑る
 すべての言葉を投げ捨てて