カクテル | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 よく冷やしたグラスに注ぐ
 長くシェイクしたカクテルの
 肌理(きめ)細やかな泡立ちの上
 生な氷のひと欠片(かけら)
 油断なく落とす瞬間に
 僕は望まずにはいられない

 かくも念入りに仕込まれて
 はたりと息絶える人生を
 
 酔いしれて
 ある刹那に極まっていく
 深くて軽い人生を

 さめれば想いは
 定かでなくなると知るゆえに