感情飛行 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 目を射る稲妻に翼を撃たれ
 厚い雷雲に抗って
 なおも舳先を上げていく船よ

 この乱流のふるさとはお前の身体
 流体の鬱勃たる隆起を受ける腹と
 泣きやまぬ風音に共鳴してしまう肺腑
 軋み続ける龍骨の奥底に
 私は今とこれからのすべてを託し
 身を横たえる

 轟々と宙を裂いて進む空の船よ
 既に帰還すべき港は遠く
 今は命のある限り飛び続けねばならない
 限られた時を航海する旅団の
 満たされることのない渇望と
 霧氷のような悲しみよ

 ひたすらに
 ひたすらに帆を羽撃かせ
 持てる力のすべてをこの一瞬に懸ける