JAZZ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


疲れきった夜にはJAZZ
バーボンのロックを
ちょっと神経質そうに口に運びながら

気怠さゆえに
無意味に流れていく音の反復を
ピアノの踊りを
安らぎとして飲み尽くしたいと言うように

頬杖をついて
音に寄りかかる

僕は十二の弦で
ルネッサンスの夕闇の溜め息を
弾いてみるけれど
それは澄明な情熱

頭の芯まで
痺れてしまった一日の
終わりには
復興の時代は似合わない

たどたどしくなる意識の
向こう側
琥珀色のアルコールの中で
冷たい氷がカロリと笑う


できるなら
みんな忘れて
僕のことを
僕が今そうしているように

人生のしつこさを麻痺させてしまう
サックスのダミ声と
そんな指の動かし方で
どこまでも軽いピアノのリズムに
ペニスが気楽に踊りだす

もし僕が生まれなかったら
世界は平和だったに違いない
そしてもし
世界がこんなでなかったら
僕も平和だったに違いない
おあいこさ

抱かなくたって
君のことは分かっているさ


でも実際は
JAZZ
痺れて身動きのとれなくなった脳髄の
遠い深みで

ほんとうは死んでもよかった
弱肉が
死ぬ気で弾いた8分の6

裸で路地を
歩くときには
僕はとってもシアワセで
ひとりで君に
空のグラスで乾杯をする

おいで
僕と一緒に
あの世に行こう
どうしようもない
この世の連中に
ビール一杯振る舞ってから