なめらかな水 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 流れの横に小さくできた窪みの水
 底の何処かから湧き水のように溢れ
 春先の午後の陽に
 なめらかに揺らめいて
 水底の土と硬い小石と緑の苔の文様を
 浮き上がらせる

 動きのままに静止し永遠に
 そこでずっと光っていたかのように

 歴史の襞を煌めかす
 小さな窪みの水の深さよ

 そうやって今しばらく
 憩っておいき
 長い間ずっと
 走り続けてきたお前なのだから