誰も知らない家の | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 誰も知らない家の
 どこにも行けない扉を叩いて
 あなたは告げる
 とうとうやって来たことを

 ガランドウの部屋のなか
 空気を弾くように
 あなたの笑い声が谺して
 光に踊った

 息はずませた窓の辺の

 読みさしの本のページを
 ぱらぱらと動かして
 正午過ぎにシンデレラが去ったとき
 僕は透明な靴を拾いあげ
 丘を過ぎていく風に向かって投げつける

 探してほしいと
 
 この家のこの部屋の
 真空みたいな静けさを満たす
 色とりどりのモミジバと
 金と銀の木犀の香と

 あなたなしでは輝かない
 この世界とを