花を拾いに | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 ダフネ
 僕は花を拾いに出かける
 撒き散らされた花を

 花の国に見捨てられて
 父なる雄蕊と母なる雌蕊は折れて
 挿し木して偶然に育った
 見捨てられた花の
 芳(かぐわ)しい花びらを


 ダフネ
 君は花を拾いに出かける
 どこにも咲いていない花を

 失われたことに気づかずに
 美しい春の日がまだ耀いていると
 君は信じようとし過ぎる
 君がまだ幼くこれからの命であることと
 世界がなおも若いということは
 同じではなく

 だから
 君の探している花はもう咲くことがない


 ダフネ
 君は拾われた花びら
 ほかの何処にも咲きえなかった
 
 つややかな白い肌は甘く
 けれど化身して
 少年ダフニスのように自らを忘れて
 悲しみの絶頂で君は狂い
 わからなくなった

 救いがたき
 無方針な神話