まだ十そこそこの
青い目の
花のように白い肌した少女は
泣きやむと
自分はダフネという名前だと答えた
置いていかれたと
その表情が言っていた
少女のクロエに?
いやすべてのひとに
親しく自分を育んだ親たちに
まだ早い春の日に
香りのダフネ Daphne odora は沈丁花
その花のように
鋭く甘い匂いがして
手鞠のように身を寄せ合って咲いた花
その花のように
小刻みに震えていた
海に身を投げた親たちの
祭壇に捧げる花もないままに
ダフネはくるくると舞い踊り
動きつづけることで
涙を消そうとでもするように
栄光の月桂樹に似た葉をまとい
素足で冷たい石畳の上を
覚えがあった
その同じ絶望の甘い匂いに
投げ出された花の
始まったばかりの孤独の日の
きらきらと輝く目は
深い海底の虚無を見てしまうのか
瞬きもしないで
巨大なパン神の幻は
君のクロエを救いにはこなかった
そのことを知っていて
君はまだ雨の中で踊るのか
いや何も
考えることができないのだ
明日のことも
今日に自らが居る場所のことすらも
置いていかれた
まだ少年のように青い
早春の香り高い花
ダフネ・オドーラ
救いのパンになれないにせよ
横恋慕したアポローンにもならないにせよ
しばらくは
君の香りのする場所にいる