街を見下ろす小さな山の
上にチシャ猫の口が笑っている
大きな
人よりも車よりも大きな口が
山入端の薄桃色の夕べの空に
なんと薄い黄色い唇の月だろう
笑顔なのか冷酷な笑みなのか
壊れた猫は愚かな存在からはほど遠く
ただ愚かな人々の
論理的な不整合さを笑う者として
暗い雲の流れる中を
見え隠れしながら浮遊する猫の月
正しいと信じてやまぬ毎日の
矛盾を消えゆきながら嘲笑う
顔のない笑みだけが宙に浮く猫は
身体なき者が感情だけを持つように
在り得ぬことを見事に印象的な絵に描く
キャロル独特の辻褄のあわない人生の
意味なくきらびやかに光るシンボルで
それでも
世の愚かさに勝てもせず
群れ居る車のクラクションに追いまくられて
いずれは消えゆかねばならない
哀しき猫なのだ
その猫が耳まで裂けた口開けて
苦笑いする
春の宵
どのような愚かで不整合な出来事も
んでもありぃの現実に
僕らの身体は生温かくなる