ゆとりなき時を望みて | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 僕は多分ある程度気づいている
 この頃の僕はゆとりを
 物事を少しは知的にとらえ
 状況にはまりこまないように
 していたものを失いつつあると

 でもそれは半分は
 いやほとんど僕の望んだことなのだ
 妥協した優しさや
 平和のためのゆかしさを
 失って

 初めて自分に向き合える気がする
 
 そのためにはゆとりを失い
 狂気に侵されようと
 僕はゆとりのない
 引き返せない歩みを望むのだ
 安穏な自己欺瞞を捨て

 自分自身への誠実さにかけて