無力な私に | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 音楽の前に
 歌の前に
 言葉は
 言葉は
 あまりにも無力

 どのように力強い腕をもつ闘士も
 舞い降りる
 天使の一撃に
 勝つことができないように

 いかなる匠の手で描かれた絵も
 ひとひらの花びらに
 伍して開くことのないように

 歌の翼を広げる鳥と
 硬い甲羅に重い足取りの亀のように

 意味は
 息づき
 高まる声にかなうことがない

 無力な私にできることは
 何一つないのかもしれないが

 それでも私に
 聴くことができるなら
 聴きつづけよう

 描くのをやめて
 そこに自ら立つ声と音楽を

 描かずに
 在ることを誇らかに悦ぶ歌を

 描かずに
 そこに美しく在る言葉を
 夢に見ながら

 敗北を喫した者が
 勝者を
 愛さずにはいられないように

 聴いて

 私は
 盗むことができるだろうか

 歌い手が死ねば
 もろともに消える歌声の
 激しくて甘い刹那の
 生き方を

 書き手など
 すぐに振り捨てられる
 乾いた永遠の言葉の
 ひと春の浅緑の芽のために


 

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