そんなこんなで僕らの恋は
未踏と僕の恋路は危機に瀕していた
未踏の長い秘密の恋の告白の後
僕らの感情は危なっかしい綱渡りで
心臓が震えれば震えるほど
僕らはお互いのそばに居たがった
沈黙だけ息の音だけの電話も
毎晩になったり時には二時間おきにかかっては
突然途切れたりした
それは不規則な振り子の
往復運動のようなものだった
不規則な振り子なんてものが
この世の中にあればの話だけれど
十二月の初め頃だったと思う
昼間カリー・ハウスか何かの前ですれ違うとき
未踏は珍しく嬉しそうな顔で
綺麗な封筒を空にかざすようにしながら
僕に手渡した
「何?」
「開けて」
開いた封筒の中の
ほんのりピンクのカードの表に
未踏の字で『招待します』と書かれていた
中には
『今まで呼ばなくてごめんなさい
歌を聴きに来てください
席は予約しておくから』
それから日付と時間
未踏の歌っているレストラン・バーの
夜のプログラムへの招待状だった
「車じゃなく電車できて」と未踏
それだけ言うと微かに微笑んで
手を振った
気のせいか
ゆっくり歩いていく未踏の後ろ姿
不思議と軽やかに見え
招待状の
日付はその日
当日の夜への招待状を数時間前に渡された
都合を聞かなかったのは
Noはないということだろう
何があっても
僕が最初に未踏に会った
一年前の夕暮れの
駅の雑踏で感じたのとそっくり同じ
一日の終わりと夜の始まりが
寄せては返すような感情を
その招待状がまた僕に
熱っぽく運んできて
僕は思わず昼間の空を見上げて
星を探した

こめんとらん
