先週まで放送していたNHKの「天使の耳」。交通警察官を描いたドラマだったが、15年前に妻を亡くした交通警官が、明かりのともっていない部屋に帰っても、毎晩「ただいま」と言っていた。
そしてある時思いが爆発し、もう一度「ただいま」と大声で叫んだ後に「なんで答えてくれないんだよ!!」と大号泣するシーンがあった。
誰もいない部屋で誰とも会話もできない。以前は「お帰り」と言ってくれた妻がいなくなって15年もたつのにそれでも「ただいま」と言い続ける。
演じたのは安田顕。名演技だった。
子供もいない私にとって母の死は永遠の静寂を伴うものになった。普通の会話ができなくなった。お休みなんて5回も6回も繰り返していたこともあった。
その母がいない。どうしようもない悲しみだ。
妻の死にこだわる安田顕に同僚の女性警官が、「忘れなさい。人間は忘れるようにできてるの。それが幸せに生きるためのありがたい能力よ。」と言っていた。でも15年忘れられない人には無理だろう。
いまから15年だと私は80歳だ。母のことどころかもっといろんなことを忘れるれているかもしれない。それを能力と言えるかどうか。
そうなる前に死にたい。