5月の読書
管 啓次郎
「本」についてだけでなく、「言葉」「思想」について、それらを生み出した世界各地の人々の存在について書かれていて、一文一文が胸に響き、考えさせられる内容でした。
引用されているたくさんの作品(その作者の言葉)も印象的で、管氏も自身の考えをより確かなものにするために、次へ、また次へと扉をたたき続けていることがわかります。
自分のことを振り返ると、読書で培われた感受性、導かれた思考、悲しみや苦しさから救われた経験もたくさんあります。内容の正確な記憶はなくても、その経験は深く心に刻まれています。 集中力や視力が衰えてきましたが、『遠く隔たった次の一冊、二冊三冊へと引き寄せられながら』ゆっくり本の森を歩いていきたいと思います。
小さな町の風景 杉 みき子
雪景色の静かな町の表紙をめくると、『小さな町がおしえてくれた』45の物語が、なつかしい時代、なつかしい場所へと連れていってくれます。
子どもの頃、自然はこんなふうに神秘的で、町の向こうはこんなふうに未知の世界で、人々はこんなふうに素朴で穏やかだったことをしみじみと思い出しながら読みました。自然の音に耳を澄まし、そこにあるものを優しい眼差しで見つめる。作者は、子どもの頃の豊かな感性を大人になっても忘れずにいたのですね。
ハレルヤ 保坂 和志
NHK「作家と猫」の番組で知り、いつか読みたいと思っていた作家。
独特の文体に行って戻ってしながら、独特なのは作者の感性もだと思いました。
4話のうち「ハレルヤ」と「生きる歓び」は猫との出会い、猫との暮らし、とくに病気になった猫への思いが書かれていて、共感し、ときにハッとさせられながら読みました。
『「生きている歓び」とか「生きている苦しみ」という言葉があるけど、「生きることが歓び」なのだ。』
そのまなざしの深さは、猫以外へも向けられていて、他の2話もやゝ難解ですが、しみじみとした気持ちにさせられる作品でした。
五番目の女 上 ヘニング・マンケル
いつも1行目からヘニング・マンケルの、というよりヴァランダーの世界にスッと引き込まれてしまいます。今回も残虐でおぞましいできごとや事件が続き、私生活の疲れきった様子もいつも通りですが、いっしょに疲れながら彼の考えや捜査にみっちり付き合ってしまいました。
破れた靴下を繕わなくなってしまったこの国は、これからどうなるのだろうと憂える場面では、だからこそ彼は有能で、そして人の倍も疲れるのだと思いました。欧州の歴史は複雑で、アフリカとの関わりもかなり複雑。事件がどんな方向へ進むのかも予測できず、(下)へ急ぎます。
読了日:05月13日 著者:ヘニング・マンケル
五番目の女 下
いくつもの問題や苦悩が隙間なく詰め込まれて物語が進み、解決とは言えないような結末を迎えました。殺されたのは、被害者と呼べないような酷い男たち。人権の先進国と言われる国でもこんなにDVがあるのだと、いつもため息をついてしまいます。殺され方はどうかと思いますが、彼らにも何らかの罰がくだされるのは当然だと思ってしまいました。
ヴァランダー以外の警官も大変な目に遭い、心身ともに疲弊しています。それでも、誰かがやらなければという思いで仕事をする…。今回もみっちりと考えさせられる作品でした。一筋縄ではいかない犯人の心を開くことのできる有能な警官なのに、私生活ではなかなか自分の幸せにたどり着けないことが不思議です。その不器用さがまた魅力なのかもしれません。
作中に出てくる自警団については、『制裁』を読んで問題の根深さを考えさせられました。

カザアナ 森 絵都
カザアナ。風穴。石を読む石読み。空を読む空読み…。物語は不思議な紹介から始まり、風穴を通って何だか不穏な世界へ連れていかれるのではと思いましたが、そこはやっぱり森絵都さん。通り抜けた先に見えたのは“希望”でした。
自分の心に素直に、自然が語りかける声に素直に耳を傾けると、人はもっと謙虚て穏やかに生きられる。そして、世界は変えていけると、柔らかなメッセージが織り込められていました。
何より為政者、政治家は穏やかでいてほしいと、今、切に願います。
運転免許証更新の「高齢者講習」のお知らせ
という葉書が届きました。
2時間6450円。歳をとってもやることがいろいろありますね。
怖ろしいことに、パソコンがもうすぐ機能停止になりそうです。
ここまで打つのにかなりの時間がかかってしまいました。





