牡丹の蕾 ピントが合わない…
主人公ソフィアは実在した12歳の少女。モザンビークの悲惨な歴史の中で育ち、怖ろしいできごとによって大切な家族と両足を失いました。そのソフィアが絶望の中から希望へと歩み始める物語です。
これまでに読んだアフリカを舞台にした物語にも、アフリカの大地と同じような力強い色彩が描かれていました。燃えるような大きな太陽、暮らしの中心にある炎。それはアフリカの人々の生命力そのものの色で、ソフィアの中にもそんな力が受け継がれていたのでしょう。
その力と周りにいる人々が善意で差し伸べてくれた手が重なり、希望への道を開いてくれました。
心に残る言葉がたくさんありましたが、その中の一つ。
「縫い目はすべてのものを繋げていく。人と人の間にも目に見えない縫い目がある。賢くなりたいなら、人間を好きになりたいなら、縫い針を手にするといい。布きれに憧れや悲しみを刺繍してごらん。気持ちがずっと楽になるよ。」
縫い物に限らないでしょうが、手仕事にはこんな力がありますね。
厳寒の町 (創元推理文庫 )
アーナルデュル・インドリダソン
日本の雪国の映像さえ震えながら見ているのに、この厳寒の国の描写はとにかく寒く、そして暗く重いものでした。
『容赦ない冬の天候のもとで人々がもがき苦しんで死んでいった』この国特有の困難さに、さらにヨーロッパがかかえる新しい問題が加わり、悲しい事件が起こります。
新しい問題「移民」。気候や文化が違いすぎるこの国に移住してきた人々と受け入れた人々の葛藤が、捜査を進める段階で浮き彫りになっていきます。
警察官エーレンデュルの抱える苦悩もこれまでの4作品と同じ。その苦悩する姿に胸を痛めながも惹きこまれ、ほぼ一気読みでした
女のいない男たち 村上 春樹
6話の短編集。大切な人(女性)を失うと男はこんなに孤独で苦しいのかと、読み進めるごとにだんだんつらくなっていきました。同時に、なぜ女性はこの男たちから去ってって行ったのだろうと、繊細で傷つきやすく、踏み込むことがためらわれるような関係に互いの寂しさを思いました。
読む前は映画を観ようと思っていたのですが、今はどうしようかと迷っています。
素晴らしい作品を読んだのに、作中に描かれた不条理と、ウクライナで現実に起きている不条理が重なって、どう感想を書けばいいのか集中できず一日考えていました。
弱い立場の人、貧しい人々は何に救いを求めて生きていけばいいのか。この世でつかめなかった幸せは次の世にあるのだろうか。
答えは見つからず、主人公無暁は悩み続け、少しでも人々の救いになれたらと自分を苦しめ続けました。
あらゆる欲を絶って祈り続ける、無暁の他者への深い思いと強さに胸を打たれましたが、最後の場面では、無暁が生きていること、ともに生きることが答えではないかと思いました。
ウクライナでこれ以上の悲しいできごとが起こらないようにと願います。
過去は変えられないけど未来は変えられる―。それなら、まずは政治家は最悪の未来にならないよう知恵を絞り、勇気を出して解決にあたってほしいと願います。
やっと春が来たのに。



