極小農園日記 (毎日文庫)   極小農園日記     荻原 浩


 野菜作りや旅の、ほとんどは笑えて楽しい話の合間に、作者の人生観や創作への思いが織り込まれたエッセイ集。世代の近いわたしにとっては、わかるわかると共感しまくりでした。

 ユーモラスな内容の小説でも『ころぶなよ、流されるなよ』と自分なりのメッセージを込めて書いているとありましたが、「そのメッセージ、届いてますよ。」と返事していました。

 これからの作品も楽しみ。お気に入りの作品を読み返すのも楽しみ。

ストーンサークルの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)  ストーンサークルの殺人   M W クレイヴン


 ミステリーは先が気になってつい急ぎがちになるのですが、はやる気持ちを抑えながらていねいに読みました。人物名を確かめながら。彼らの人となりや関係をイメージしながら。

 主人公ポーの不正やいじめに対する導火線の短さと激しさにハラハラする場面もありましたが、だからこそ心から信じあえる友だちができるのでしょう。問題が解決する手前で社会の闇という悍ましい壁に道をふさがれますが、今回はかなり慎重に導火線を使いました。納得の着地。

 シリーズ第一弾とあったので、第二弾を楽しみに待ちます。ティリーも必ず登場すると信じて。


木曜日にはココアを (宝島社文庫)  木曜日にはココアを   青山 美智子


 タイトルとカバーから想像していたとおり、温かくやさしい物語でした。一話目を読んだとき、きっとまたこのお店の、この二人に戻ってくるだろうなと思ったのですが、想像以上のすてきな一周でした。

 人を思いやり、ていねいに生きるとこんな出会いがありますね。長く生きていて、それは実感。



刑事マルティン・ベック 煙に消えた男 (角川文庫)  刑事マルティン・ベック 煙に消えた男  

        マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー 


 この作品が世に出たのは1966年。前回の東京五輪の2年後です。もちろん、携帯電話もパソコンもありません。防犯カメラも。

 ヨーロッパが鉄のカーテンで分断され、カーテンの向こう側でどんな悍ましいことが行われているのか、想像するだけで心拍数が上がりそうでした。

 晴れた日、という描写があってもなぜか明るさは感じられないのですが、カーテンの向こうにいた警察官がいい人で、それが一番の救いでした。地道に情報を集め、大事なことを見落とさない。事件が解決しても背景のやりきれなさが残る…。人がいる限り犯罪もなくならないようです。



きっとあの人は眠っているんだよ: 穂村弘の読書日記 (河出文庫)  きっとあの人は眠っているんだよ:   穂村弘


 穂村弘の読書日記。数えきれないほどのたくさんの本について書かれています。作品に寄せる穂村氏の素直でユニークな視点に、こんな本の読み方があるんだなと、読書の楽しみがまた増えました。

 『みんなが面白いと云っている本、話題の本(略)向上できる本、読んでおいた方がいいだろうなと思う本、その全てを読みたくない日がある。(略)そんな時は昔の漫画を読むことにする。』

 その漫画に寄せる思いも熱くて、本が本当に好きなのだなと、そんな穂村氏がますます好きになりました。あいまに登場する古本屋、喫茶店、氏の日常も楽しめます。



おばちゃんたちのいるところ-Where The Wild Ladies Are (中公文庫)  おばちゃんたちのいるところ-Where The Wild Ladies Are 

             松田 青子

 おもしろそうなタイトルと「海外メディア絶賛!」の帯につられて手に取った本。

 どんなおばちゃんたちか、ざっくり言うと幽霊です。おどろおどろした幽霊ではなく、ちょっとすっとぼけていて、ちょっと笑えて、ちょっとお節介。あの世とこの世の境界をこんなふうに越えられるのは、死が無ではないと思いたいみんなの願いなのかもしれません。

 幽霊も幽霊が見える人も働きやすい社会。いいですね。全17話。主に落語がモチーフになっています。


ハルコロ (1) (岩波現代文庫, 文芸338)  ハルコロ (1)   石坂 啓, 本多 勝一


 表紙に〔漫画〕石坂啓〔原作〕本田勝一〔監修〕萱野茂とあり、かなり詳しく調べられた作品だということがうかがえます。

 アイヌの歴史を思うと、どうしても和人からの迫害や同化政策の苦しみ悲しみが浮かんできますが、帯には『滅びゆくとか虐げられたとかいったラベル話貼られていない作品』とありました。壮大な北の大地。家族や少女たちの暮らしや成長の様子が、今のわたしたちのそれと同じようにいきいきと描かれています。違うのは、彼らが恵みをもたらす自然に常に感謝し、謙虚な気持ちで暮らしていること。

 その自然の描写がとても丁寧で、「神々の大地」という形容がぴったり当てはまります。星野道夫さんの本を読んだとき、北海道から千島列島、そしてアラスカへと渡っていった人々がいると想像してしみじみとした気持ちになったことを思い出しました。 

ハルコロ (2) (岩波現代文庫 文芸 339)  ハルコロ (2)   石坂 啓,本多 勝一

 

 ハルコロ(たくさんの食べ物)という名の少女が、結婚して母になり、おばあさんになるまで物語が続きます。恋心も母としての思いもわたしたちと同じ。ただそこには先祖から口承で伝えられてきた神々の話やしきたりを持つ、ていねいで独特の暮らしがあります。

 やがてシサム(和人)によって徐々に脅かされていく悲劇が近づいてくる…というところで物語は終わります。差別につながるからと、アイヌという呼称を使うことが憚られた時代もあったと解説にありました。忘れてはいけない、無かったことにしてはいけない。むしろ大切なこの国の歴史です。


夜空に泳ぐチョコレートグラミー (新潮文庫)  夜空に泳ぐチョコレートグラミー   町田 そのこ


 息苦しくてこの街では生きていけない人と、息苦しさを感じながらもここで生きていくしかない人の、寂しけど、やさしい物語たち5話。5話のつながりが、人はみなそんな寂しさを抱えて生きているのだと教えてくれます。 

 親と子、男と女、心と体。その関係がとても自由で、自由な分だけ息苦しいのかもしれません。それでも、そばに手をさしのべ、よりそってくれる人がいれば、幸せに向かって歩き出せます。

 最後の場面で「頑張れ」の祈りが通じたことに安堵し、自分も誰かに手をさしのべられる人でありたいと思いました。



乗客ナンバー23の消失 (文春文庫 フ 34-1)  乗客ナンバー23の消失   セバスチャン・フィツェック


 クルーズ船から乗客が消える…。怖い、おぞましい。そんな場面が次から次へと現れて、ホッとできる場面がありません。1つ解決して余韻を味わえると思ったら、また予想だにしていなかったつらい事実が待っています。

 事件も悲惨ですが、おとり捜査の実態も凄すぎて、こんな社会で生きていくのは怖すぎます。平凡に見える生活に潜む闇。

 事実は小説より…だとしたら、クルーズ船には乗れなくなりそうです。それも作者の力量ゆえでしょうか。

 

 

三毛猫黒猫オッドアイ猫

 

6月はミステリー2冊漫画2冊を読んだので

途中でやめられなくなり10冊になってしまいました。

目がかすんで、満月はダブって見えるし

街の看板も見えにくくなりました。

 

高校3年生のとき、左右1.5の視力で

勉強していないことがバレバレだったのですが

今は左右0.6。運転時の眼鏡が義務づけられそうです。

目も口の中も手足の節々もがたがた。

老いが体中で暗躍しています。

 

 

 


種から育てたバジルと矢車草