エーランド島の短い夏が終わり、この物語、イェルロフの四部作も終わってしまいました。
イェルロフの子ども時代から、ミレニアムを迎えるまでの70年…。アジアでも欧州でも悍ましい戦争が起き、ソ連では閉ざされた壁の向こうで心が凍りつくような政治がおこなわれていました。そんな時代を生きた人々が起こした怖ろしいできごとを、イェルロフはじっくり見つめ、縺れた時間の糸をていねいにほどいていきます。ほどけた後に残る、置いていかれた者の寂しさ。
伝説の時代を生き、歴史に翻弄されて、いつの間にか人は老いていきます。重厚な作品でした。
表題作の『泣き童子』…あんじゅうのようなほのぼのとした存在かなと思っていたら、怖かった!
それ以外の作品も、今回は前の2冊に比べて怖いものが多かったような気がします。「魂取の池」も「くりから御殿」も「まぐる」も、その存在だけでも怖ろしいのに、そこに人間の思惑が絡んでさらに何倍もおぞましくなっています。
少しだけほっとできたのは、初めて働きに出たおえいをよろしくと挨拶に来たおこぼさんの話。
恨みや身勝手は、手に負えない怖ろしいものに姿を変えるけど、やさしさや素直さはこんなに温かいものになって現れるんですね。
著者:宮部みゆき
重ねられた物語が、こちから、あちらから、と少しずつ読み解かれていき、最後に壮大な1冊になりました。それまでの緊張感がすごい。
内戦と黒い警官と一族の崩壊。そして、行きつく先に破滅が待っているかもしれないのに抑えきれない愛。ずっと暗い描写が続きましたが、怖ろしい罠にかかっても友情や人間らしさを失わなかった人々にやさしい光がさしてきて、その奇跡をかみしめるような気持ちで読み終えました。
『戦争は、忘れることをえさにして大きくなっていく。』戦争がテーマの本ではありませんが、内戦の濃い影の中で繰り広げられた物語です。
著者:カルロス・ルイスサフォン
「忘れられた本の墓場」という言葉から始まる物語。
スペイン内戦が終わり、フランコ政権下でファシスト体制が敷かれていた頃でしょうか。コレラで母親を亡くした少年ダニエルは、本の墓場で1冊の本「風の影」に出会い魅了されます。
作者の謎に満ちた人生を追い、その過程で出会った愛と恐怖の数々。 スペインの明るい空なんてどこにも出てこなかったような気がします。暗い闇の中にさらに暗い影が隠れているようで、楽しみに(下)に行きます、とは書けないほど怖いのですが…。
著者:カルロス・ルイスサフォン
景(きょう)の生き方を描いた作品で、しかももう少し地味で細やかな生き方かと思って読み始めたのですが、舞台が陸へと広がり、登場人物のスケールも大きくなって、映画ならスクリーンに収めきれないといった感じでした。
考え方も行動も一筋縄ではいかず器の大きい男たちの中で、男勝りではあるけど、勝ち負けや策略よりも、教えを信じて命がけで戦う源爺や留吉を守りたいと思う景。 単純で浅いかもしれないけど、そういう人間の方が好きだなと思いながら読了。
次巻を読むのが怖い…。ちなみに、わたしの頭にうかぶ信長は、高橋幸治です。
著者:和田竜
読み進めるうちに、海賊の娘景(きょう)のおおらかさや素直さがおもしろくて好きになってきました。信長を相手にそのおおらかさが通用するのか、ちょっとハラハラしながら(二)へ進みます。
著者:和田竜
お気楽なようでいて、これはけっこう難しい生き方かもしれません。
ただ単に月10万円で暮らすということではなく、何かをしなければという、人の脳や体内にプログラミングされているかのような意識とどう向き合っていくか。目的ややることがない生活はかえって辛いものです。
でも、精神がダメージを受けそうな会社や家庭にしがみつくよりは、そこから逃げ出す勇気、お金や物や名にこだわらない勇気がもてるのは大事なことですね。ゆっくり生きていれば、キョウコさんの考え方もまた変わっていくかもしれません。
著者:群ようこ






