今月は旅の本が多くなりました。
先月に続いて、星野さんのアラスカについての本は、自然中で生きるすばらしさと厳しさを語りかけてくれます。
それから、ひっそりと催している『一人北欧ミステリーフェア』。
また新しい作者と出会いました。作者名がなかなか覚えられないのが寂しいのですが…。
アラスカで暮らす、アラスカの自然や人々と共に生きる…その道を選んだ作者の思いが、憬れと厳しさを伴って伝わってきました。
シベリアとアラスカが繋がっていたはるかに遠い氷河期、そこを渡ってきたモンゴロイドがいたこと。動物の脳はその時代からの地球の歴史が書かれた1冊の本だということ。なんて壮大な歴史でしょう。
雪の中に佇むムースの写真を見ていると、人間はこんな神聖なところにまで入り込んではいけないという気持ちになりました。そう、『白人(自然を恐れない人)に大切なことを話してはいけない。みんな取りあげられるから。』
著者:星野道夫
30年間心の中で温め、思い続けた憧れの地への旅。空港に着いてすぐ鞄を盗られたところから始まりますが、そこから先はボローニャの歴史や市民の知恵に感心することばかりでした。
あゝ、だから作者はここへ行きたかったのだなと、これまでに読んだ氏の作品と重なるものを思い出しながら読みました。
人に大切なものは何か、街に必要なものは何か、豊かさとは何か、産業や歴史・文化など様々な面から考えさせられます。お金儲けではなく、いい仕事をする喜び。社会からもらったものを社会に還元する意義。美しい自然と同様に守り続けたい精神です。
著者:井上ひさし
スウェーデンの警察小説。25日に読み終わりました。空が湿って暗い日、そしてイギリスのEU離脱が決まって、これからどうなるのだろうと世界や株価が騒いだ日です。
離脱派の主張の中に移民の問題がありました。この小説も残されたダイイングメッセージが「外国の…」。
主人公の刑事ヴァランダーも人種差別はよくないことだと知りながら、移民に関わる犯に理想論だけでは立ち向かえないことを感じています。『いま自分がいるのは新しい世界なのだ。警官としての自分は、もっと古い世界に生きている。』
著者:ヘニングマンケル
昭和60年発行の漫画。
友人が、息子さんの本棚で見つけたと貸してくれました。昭和の半ば頃、山村で暮らすおばあちゃんの、ほのぼのと温かくちょっと切ない日々が描かれています
。この頃、東京は「三丁目の夕日」「トトロの森」みたいな暮らしでしょうか。わたしの歳だと懐かしくて、あゝ、こんな時代だったよなとうれしくなります。
「おばあちゃん」、いい響きです。
著者:法月理栄
あちこちのページから温かさがにじみ出てくる楽しい作品でした。車がこんなにいろいろ考えて会話しているなんて、伊坂氏しか知らなかったことですね。
登場人物たちもちょっと抜けてて(お人好しで)前向きで爽やか。会話の味は伊坂氏ならではです。とくに亨君がかわいい!
折々の名言と最後の二人(?)の登場には感動してしまいました。そして、車なしでは成り立たなかった自分の生活のこと、手足のように、家族のように頼りにしていた歴代の車のことを思い出しました。ホント、生きているといろいろあります。
著者:伊坂幸太郎
警察内部の組織の力関係、警察官の人間関係に、本人たちも大変だけど読む側も疲れてしまう小説でした。おもしろいので、もう少しもう少しと読み続け、深夜までかかって一気読み。その意味でも疲れる小説でした。
わたしたちの安全を守ってくれるはずの警察組織や公安はかなり怖い存在でもあるようです。
安堵したのは、怖い中でも『国家ではなく国民を守る』という気概を持った警察官がいて、そこに友情や人情もあって、捜査の原動力になっていいること。ボンと呼ばれる若手刑事がどう成長していくのか、楽しみです。
著者:今野敏
見開きの左ページに小さな写真、右ページに短いエッセイがあります。
あとがきにもあるように、「旅の窓」は「心の窓」。写真は言葉以上に沢木氏の心を写し出しているようです。味のある顔、光のある風景、めずらしい瞬間、そして素朴な笑顔…。
ときどき、胸にこみ上げてくるものがありました。写真から半歩、わたしの心から半歩歩み寄って感じ合うものと、もうこんな旅をすることはないだろうなという寂しさとがあったのかもしれません。マジック・アワー。わたしも夕方の空が醸し出す壮大な絵が好きです。
著者:沢木耕太郎
都民ではありませんがテレビを見る時間が増えて、なかなか読書が進みませんでした。
せっかちなので、帯などを見ずにいきなり読み始めるタイプ。読みながら思ったことが帯に書いてあると、わたしってけっこうまともなのかなとちょっと安心してしまいます。そう、これは単なるエッセイではありません。妄想というよりも小説。軽めのものもありますが、苦しみながら生みだされた作品と思えるものもありました。
岸本さん、生きていくのが楽しいような大変なような…。アロマの章では町田氏を、文字たちの野望では井上ひさし氏を思い出しました。似てる?
著者:岸本佐知子
シリーズ3作目。2作目を読んでいないので、人間関係にわからない部分がありましたが、想像しながら何とか読み進めました。
事件の始まりは過去に起きた悲しい出来事。その後、関わった人がみな不幸になり、辛い重荷を背負ったまま30年が過ぎてしまいました。悲しい事件の悲しい結末でしたが、ドキドキしながらほぼ一気読み。それだけおもしろかったのだと思います。
今回も、警察官たちの過去や悩みがかなりのページを占めていますが、悩みに対処する方法や、自分を謙虚に見つめる性格、相手を尊重する考え方など、なるほどと感心させられました。
エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)
梨木さんならではの羅針盤に導かれての旅。
近隣の国々に支配されながらも、昔からの暮らしや伝統を受け伝えたてきたエストニアの人々の、その源にあるものを見つめた紀行文です。
人と森との関わり、自然と共に暮らすことの難しさ、人が壊し続ける地球への絶望的な思いなど、普段は意識することのない地球からの、そして古代からのメッセージが伝わってきます。そんな自然への畏敬の念が、確かに日本にもあったのですが…。
人々との出会いも温かく描かれていますが、中でも心に残ったのはサーレマー島を案内してくれたタンムさんの別れの涙です。→
著者:梨木香歩








