2016年1月

起終点駅(ターミナル) (小学館文庫) 起終点駅(ターミナル) (小学館文庫)
 

 かって愛した人が寂しい人生を送っていると知ったとき、今の幸せを捨ててその人のそばにいたいと思った男。 映画「ひまわり」の主人公、「潮風の家」のたみ子と千鶴子。 時代のいたずらと貧しさに翻弄され、ひっそりと生きひっそりと死んでいくその生き方に、なぜか小さな温もりを感じ、愛おしくて、解説まで丁寧に読んでしまいました。

 自分よりも自分でない誰かの幸せを思い、その誰かが心の中にいてくれることが幸せ…。幸せには痛みも悲しみも影も含まれています。

読了日:1月28日 著者:桜木紫乃


うつくしい人 (幻冬舎文庫) うつくしい人 (幻冬舎文庫)
 

 昨夜読み終えてすぐには感想が書けず、いろいろなことを考えました。若いときは自分もこんなふうに自分中心だったなとか、本当に辛いとき、人はどうしてほしいのだろうかとか。つきなみないい方ですが、人は人と関わっていく中で答えを見つけていくのでしょう。百合が旅先で出会ったマティアスや坂崎といるうちに、少しずつ「自分」をほどいていったように。それは、偶然な出会いかもしれないけど、百合が求めていたから、探していたから見つけられたものだと思います。 誰かを認めてあげられたとき、誰かを受け入れたとき、自分も誰かのうつくしい人。

読了日:1月26日 著者:西加奈子




ことり (朝日文庫) ことり (朝日文庫)
 

 『どんな名前の人にだって、見送る人が必要です。』 以前読んだ小川さんの小説にあった言葉です。 小父さんが亡くなったとき、そばに「ことり」がいてくれてよかった…。 籠から放たれたとき、「ことり」はきっと小父さんの全部を空に届けてくれたはず。

読了日:1月23日 著者:小川洋子


遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫) 遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)
 

 戦後の長崎で出会った二人の女性。一人は復興と共に安定した暮らしを営み、もう一人は戦後の悲しさに押しつぶされそうに思われたのですが…。本当に二人だったのか、あの頃、子どもはお腹の中にいたのかそれとも川のそばにたたずんでいたのか、読み終えたあと考え込んでしまいました。

 いつのまにか足に纏わりついていた縄。子どもを水に沈めた女性。そういうものから離れようと、遠くの光を求めて祖国を去り、女性(たち)は望む自分に出会えたのかもわかりません。ただ、開けられた扉の向こうへ歩み出す、その思いが静かに強く伝わってきました。

読了日:1月20日 著者:カズオイシグロ




デッドエンドの思い出 (文春文庫)

デッドエンドの思い出 (文春文庫)
 あゝ、こういうことがわたしの幸せなんだと気づけること。そして、その幸せを言葉にして伝えなくても共有でききる人がいること。家の中やアパートの一室のように、舞台としては狭いかもしれないけど、漂う空気は外の世界へも過去へも未来へも繋がっていて、悲しささえも温かく包んでくれるようです。

 5つの物語どれも不思議な雰囲気で好きですが、「おかあさーん!」の有り得ないような経験を通して語られる、周りの人たちへの思いが心に残りました。そして、自分のいなくなった世界を想像する場面も。

読了日:1月13日 著者:よしもとばなな


生きてるうちに、さよならを (集英社文庫) 生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

 タイトルにひかれて手に取りましたが、思い描いていた内容とは違っていました。おもしろい構成ですが、最後の方にきて 「いや、そこまでは…」という結末。成功して強気で生きてきた男性中心の考え方や言動が、きれいごと過ぎるかなという感じでした。

 第一章の講師の言葉、『ふっと気がつくと、もうあの人は自分の人生から消えてしまったのだ、という(さようならも言えなかった〉別れがたくさんある。』ということは実感しています。それでいいと思える人もいますが、会いたい人がいたら会っておいた方がいい年齢になりました。

読了日:1月9日 著者:吉村達也


さようなら、オレンジ (ちくま文庫) さようなら、オレンジ (ちくま文庫)

 たくさんの方の感想を読んでいたのでいい作品なのだろうなとは思っていたのですが、「難民」という言葉が重くてなかなか手に取れずにいました。厳しい現実は想像していた通りですが、その現実の中で悲しみをシャワーで流しながら懸命に生きる女性サリマと、サリマの周りで同じようにそれぞれの悲しさを抱えて生きる女性たち。故国を離れて生きていくために、第二の故国となる地の言葉を学びながら、女性たちが言葉以上の思いで互いを受け入れ、認め合っていくその生き方に心をうたれました。生きることのすばらしさを感じさせてくれる作品です。

読了日:1月6日 著者:岩城けい




月夜のみみずく

月夜のみみずく

 雪が降り積もった森、満月の夜。すべてが眠っているような静かで美しい世界をじっと見つめているみみずく。「みみずくに あいにいくときは しずかにしなくちゃ いけない」「みみずくにあうときは おしゃべりは いらないの」 耳を澄まし、目を凝らし、出会ったことがある人だけが知っている言葉にできない感動が、この冬の「わたし」の一番の宝物です。

読了日:1月2日 著者:ジェインヨーレン