そういうのはよそでやれ | へっぽこハンター日記

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新米ハンターのコトワがハンティングした音楽、映画、書物や芸術一般について語ります。

ディスカスさんからやってきた『スタートレック:イントゥ・ダークネス』見ました。


ええと、気に入らなかったのでネタバレあります。
(-_-)




地球で発生したテロ事件の犯人ハリソン(ベネディクト・カンバーバッチ)がクリンゴン人の本拠地クロノス星に逃亡。

地球人と敵対関係にあるクリンゴン人との間に犯罪者引き渡しの条約はないため、
秘密裡にクロノスへ入り、
魚雷でハリソンを処刑するよう、
マーカス提督(ピーター・ウェラー)に言い渡されたカーク(クリス・パイン)。

恩師パイク(ブルース・グリーンウッド)を殺され、復讐心に燃える彼はその任務を引き受けますが、
法の裁きも受けずに処刑してしまうのはおかしいと副官スポック(ザッカリー・クイント)に諭されます。

そして、当のハリソンはクリンゴン人ともめているカークたちを助け、
なぜかあっさりと捕縛されたのでした…

彼の真意やいかに?!



star-trek-2-into-darkness-poster.jpg



カンバーバッチさん演じるハリソン(というか本名はカーン)はなかなか興味深い役柄で、
善とも悪ともつかない表情はさすがだなあーっと思いました。


しかしですね…
この内容はどうなんだ…


新しいSF映画として見ればよいのかもしれないんですけど…

スタートレックファンとしてはどうしても納得いかない、
艦隊内部の陰謀という設定…


あのですね、
スタートレックとは常に楽観的歴史観で描かれる、
社会風刺が持ち味のSFドラマなんですよ。


オリジナルシーズンでは敵だったクリンゴン人。

でもネクストジェネレーションではクリンゴン人との間に同盟が結ばれ、
ハーフクリンゴンのウォーフという士官が登場する。

同じように、ネクストジェネレーションでは常に戦っていたボーグ、
ボイジャーではボーグのひとりが仲間になるんです。

常に平和に向かって我々は努力すべきという、
とても尊い精神で描かれるドラマなんです。


そのもとになる地球の連邦艦隊というのは、
バラバラで戦争の絶えない現在の地球の内部の国々が、
いずれ協力しあってできるという設定。

そこから宇宙のいろんな惑星を旅していって、
絶対に中立の立場でもって、
紛争の解決や自然災害の回避をお手伝いしたり、
新しい文化を教えてもらったりする、
そういう組織なんです。


昨今組織の腐敗とか陰謀っていうテーマの映画やドラマは多いですが、
スタートレックにそれを持ち込まないでほしいんです。

だって、そこが揺らいだら、
艦隊はただの侵略者になるからです。


冒頭、他の惑星の住民に干渉してはならないという“艦隊の誓い”についての話がちらっと出てきます。


それは、かつてイギリスから入植したピューリタンたちが“自分たちの方が正しい”とネイティブアメリカンの皆さんの生活を握りつぶした、
アメリカの黒歴史を繰り返さないために重要なことだからです。

文化が違うだけであって、
どっちが偉いとか高等とかではないのです。

だから偉そうに“教えてやる”とかいう態度をとってはいけないのです。


そういうスタートレックの重要な精神が抜け落ちているんですよ…

これじゃただのSFドンパチ映画じゃないか…


というわけで、
まあ…非常にガッカリしました。


僕がネクストジェネレーション以降のスタートレックの大ファンだからこんなふうに感じるのかな、
全然別の映画だと思えばいいのかなとか途中で考えたんだけど、
逆に、じゃあ別の映画にすればいーじゃん、
スタートレックにこんな話を持ち込むなよ、と思ってしまうんだよね…


この監督さんや脚本家さんにはスタートレックがただ宇宙で派手に戦争やるドラマに見えてたんだろうか。

スタートレックは、特にネクストジェネレーション以降は、
戦争回避するためにどれだけの外交努力ができるかっていう、
大変地味で骨太なドラマなんですけどね…


というわけで、ほとんどすべてに納得いかない、
残念な結果に終わりました。

映画からスタートレックを知った人たちは、
これがスタートレックだと思うんだろうか…

やだな…
(-_-)