写真をアートにした男 | へっぽこハンター日記

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新米ハンターのコトワがハンティングした音楽、映画、書物や芸術一般について語ります。

メイプルソープとコレクター [DVD]/ロバート・メイプルソープ,サム・ワグスタッフ,パティ・スミス

¥4,935
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『メイプルソープとコレクター』を観ました。
これは1970年代~80年代をかけぬけた天才フォトグラファー、
ロバート・メープルソープの話ではなくて、
彼をスターダムにのしあげた美術館キュレーターのサム・ワグスタッフがメインの話。

ブルジョワ階級出身の彼ははじめ広告業界で働きますがいやになり、
大学へ戻って美術を専攻、
老舗の美術館のキュレーター(美術館のために所蔵品を収集する専門家)になります。
彼は近代・現代芸術に対しての関心が非常に高く、
その美術館で彼がはじめて開いたウルトラモダンな企画展示、
“ブラック、ホワイト+グレイ”展はタイム誌にも取り上げられ絶賛されます。

ウォーホールのペインティング、ジャスパー・ジョーンズのオブジェ、
トニー・スミスの彫刻。
すべてがモノクロで、すごくクール!!
この展覧会がファッションや映画などの他のメディアにも影響を与えます。
『マイ・フェア・レディ』の競馬場のシーン、みんなモノクロのドレスでした!
この企画展、マジで見たかったよ・・・。

彼はやがてロバート・メープルソープと出会います。
当時はパティ・スミスと暮らし、アクセサリーをつくったり、
ポルノ写真家の下で働いていたというロバート。
ふたりは当時の美術界最高のカップルになります。

当時から19世紀の記録写真を集めるのが趣味だったサムは、
自分のコレクションをロバートに見せ、
それらはロバートの写真に大きな影響を与えます。
毎日サムやロバートは古美術商や蚤の市をまわっては写真を買いあさり、
床に並べては眺めて、それをパティが目録にする、
最高の暮らしだったとパティがコメントしていました。
うらやましい・・・。

その写真がね、またすばらしかった!
誰が撮ったかわからない秘境や飛行船、雪祭りの記録写真、
建築や人々、モノクロというかセピアというか。
息を呑む美しい風景、奇妙な光景。
サムはこれを写真集『A Book of Photograph』にまとめているそうです。
マジで見たいよそれ!!

70年代の終わりに3人はそれぞれ成功していきます。
ロバートはフォトグラファーとして、
サムは美術コレクターとして、
パティはパンクロック・アーティストとして。

なんというか、すごく美しい三人なんですよ!
で、僕は“三人組”ってのにものすごく惹かれるので、
かっこいいな~って!

サムは当時誰もが芸術だとは思っていなかった写真というジャンルを、
はじめて芸術として世に紹介したことになります。
誰も見向きもしなかった新しいアートを模索する審美眼があったんですね。

写真コレクションを手放さざるを得なくなったあとは、
銀のオブジェや食器を集めていたそうですが、
それもかなりユニークで、みんなを驚かせたそう。

80年代にサムもロバートもエイズで亡くなり、
パティがこのドキュメンタリ映画全体にわたって当時を回顧するコメントを寄せています。

ある人はいいました、
サムはヒトもモノも集めるコレクターだったと。
無名でもすばらしい才能を持った天才とその作品を、
どこかから発掘してくるスペシャリストだったと。
そういう逸材がもういないというのは、
僕ら一般人にとっても、芸術家にとっても非常に残念なことだな・・・。

そして、ロバート・メープルソープの名前と作品は誰もが知っているのに、
彼を発掘したサム・ワグスタッフを誰も知らない(僕も知らなかったです)のは、
寂しいことだなと思いました。

メープルソープの回顧展だけでなく、
サム・ワグスタッフの回顧展、企画してほしいな~!!!
ブラック、ホワイト+グレイ、見てみたいです!!