あたしは車椅子に座り、
看護師さんと少しおしゃべりをしながら長い廊下を進んでいく。
途中エレベーターにも乗った。
ここは市立の総合病院。
本当ならもっときれいな産院で出産したかったんだけど、
ちょっとした持病を持っているために、
主治医にここで出産するように勧められた。
車椅子を押してた看護師さんは、
新生児科の前で止まった。
「ちょっと待っててくださいね。」
そういうと看護師さんは中へ消えて行き
またすぐに戻ってきた。
中へ通される。
そこには、産科の担当の先生と、初めて見る女医さん。
そして、あたしが昨日生んだばかりの赤ん坊が、
細く小さな腕に点滴を入れた状態で保育器に入ってすやすや眠ってた。
「あぁ、こんなところまで来てもらっちゃってごめんなさいねぇ。」
新生児科の先生はやたらと明るかった。
とは言っても、前日に出産したばかりのあたしが、
新生児科にいるという事は、やっぱりあまり喜ばしい事じゃない事くらいわかる。
ずっと、心臓がドキドキいってる。
顔色もよくなかったらしく、看護師さんが
「辛かったら少し横になりましょうか?」
と言った。
「いえ、このままで大丈夫です。」
あたしがそう言うと、
「じゃあ、辛かったらいつでも言ってくださいね。」
女医さんが言った。
「ちょっと赤ちゃんのお腹がきになるんですよ。
おっぱい飲んでも吐いちゃうでしょ?
ミルク飲んでも吐いちゃうのね。
少しだけなら心配もいらないんだけど、この子の場合
ほとんど受け付けてない状態みたいなんです。」
そういうと視線をあたしからわが子へ移し、
「でも、今点滴で栄養補給してますからね。
大丈夫ですよ。」
「ただ、このままお母さんと一緒に退院させてしまうのはちょっと怖いのね、
だから、しばらく新生児科で入院という形になってしまいます。
一般の産院だとね、産科の先生がそのまま面倒をみてくれるところなんだけど、
ここは幸い新生児科もあるし、新生児専用のNICUって設備もあるのね。
ちょっと大げさになっちゃってるだけで、そんなに心配はいらないから大丈夫ですよ。」
とは言われても、やはりすっかり安心してしまうわけにはいかず、
涙が出るあたし。
少し質問もしただろうか・・・、
その辺はあまり覚えていないけど、
先生と少し話しをして、産科の先生からもアドバイスを受けたりした。
「私からのお話は今日はこれでおわりなんだけど、この後看護師のほうから
入院についてちょっと説明があるから聞いて帰ってもらいたいのと、
あと、明日またここへ来て欲しいの。できたらご主人と一緒にね。
お仕事終わってからでもかまわないから連絡してもらえますか?」
そう言ってあたしが返事すると、
今度は看護師さんがまた車椅子をおしてくれて別室へ。
入院の手続き、NICUへの出入りの仕方など、簡単に説明をうけてから
産科へ戻った。
「顔色が良くないから、少し横になって休んでてくださいね。」
そう言われたけど、すぐにでも旦那に連絡しなくちゃ・・・
落ち着いて寝てなど居られなかったあたしは、
その後すぐに、明かりの消えたロビーまで行き
電話をかけた。