娘のクラスメイトにMちゃんという女の子がいる。
Mちゃんとは小学校付属の幼稚園から一緒で、幼稚園時代は娘はこの子としか遊ばなかったほど仲が良かった。
そんなMちゃんのお母さんは明るく楽しい人なのであるが、お父さんがちょっと変わった感じの人で、私は一度も話した事はないまま今に至っていた。
服装が独特で、挨拶しても笑顔で返って来た事がないので、周囲からは避けられた感じの人である。

そんなMちゃんのお父さんから、何と私は話しかけられた。
いつものように学校にお迎えに行くと門が開いておらず、Mちゃんのお父さんから「まだですか?」と聞かれたのである。
私は「そうです」とこわばって答えてしまったのであるが、Mちゃんのお父さんは「遅刻したと思って走って来たのに、何だ・・まだだったんですね~」と笑った。
笑いはった・・!
私はママ友から、このMちゃんのお父さんが柔道を教えている事を聞いていたので、「先日、日本に行っていたので、カーライルに戻ってからは極寒に感じます。今日はマイナス1度で本当に寒いですね」と日本という名を出してみた。

Mちゃんのお父さんは「ああー!!いやー!!日本に行きたいと憧れて30年になります。結局、一度も行けていないんです」と言った。
私は「柔道を教えておられるんですよね?」と話題を振り、Mちゃんのお父さんは「そうなんですよ。憧れの国、いや僕にとっては聖地ですから」と見た事のないキラキラした目でそう言った。

よくよく話すととても良い人で、柔道の他に居合道もやっていると教えてくれた。
剣道はやってみたが、どうも好きになれなかったとも話してくれた。
私は息子に空手を習わせようと思っているので(息子はやる気満々なのであるが、5歳でまだ小さいから7歳くらいまで待ってと言われたので待っている)私は「武術は男女関係なく、やっておくべきだと大人になってから本当にそう思います。娘にも空手をさせたかったんですが、戦うのが嫌だと言って行かなかったんです。体験入学はさせたんですが・・」と話した。

するとMちゃんのお父さんは「そうなんです。僕も教えていて、時に悩む事がある。柔道は戦うのではなく、自分を強くする、自分を信じる強さを手に入れる訓練なのに、戦う目的で強くなりたいと来る人が多い。僕は日本の先生に教えを受けてから、本当に日本の柔道と欧米の柔道への考え方に差があるなと痛感しました。日本の先生から『柔道は自分を鍛えるもの、そして楽しむこと』だと教わりました。居合道もそう、きっと他の武術も同じだと思う。自分を鍛えて自分の強さを蓄えていく、それが本当の姿だと思うんです。だから僕は子供達に柔道は戦う為に練習するものではないと説明しています。しかし、悲しいかな金儲けが目的の教室はそうではない。喧嘩から身を守るための教室みたいになっている所もある。同じ柔道家として情けない」と言った。
私は話を聞きながら思わず映画「ベスト・キッド」の中に出てきた、流行ってる方の空手教室を思い出してしまった・・
ミヤギさんの空手が神髄とするならば、あれは完全なる金儲け目的の喧嘩教室であろう。

そんなワケで、ひょんなことから話すようになったMちゃんのお父さんと私なのである。
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