子供の頃、通っていた図書館の手前におじいちゃんが1人でやっているパン屋があった。
そこの「甘食」が強烈に美味しかった。
もう若い方は「甘食」を知らないと思うが、日本版マドレーヌだと私は思っている。
スーパーにも売られているが(今も売られているのだろうか・・)パン屋で売られていたのとは比にならない。
小学校の高学年ごろには、もうそのパン屋が閉店となり、二度とあんな美味しい「甘食」を食べる事は無かった。

それから大人になり、ある時、めちゃめちゃ美味しいマドレーヌを頂いた。
どこのケーキ屋のものか分からないが、当時勤務していた病院の患者さんで、社長をしていた方から頂いたのである。
神戸の何処かのお菓子屋だったように記憶しているが、もうそれも忘れてしまった。

イギリスに来て子供が出来、手作りの美味しい、それも出来る限り日本の食べ物を食べさせるように心掛けていた私は、ある日「甘食」を検索、作ってみた。
5回程作ってみたが、どんなに試行錯誤しても、やはり職人のじいちゃんの作っていた「甘食」からは程遠い。

甘食は諦め、マドレーヌの旅が始まった。
しかし、イギリスの田舎に「マドレーヌ」そのものを知っている人が周囲にいない。
あんなにフランスには何度も行っている義母もマドレーヌは知らなかった。

ならば自分で・・と思いがちであるが、甘食を手作りした失敗から学んだ。
絶対にアノ味は再現できないのだということを。
数に限りがあるカーライルのスーパーで、今のところ唯一買えるマドレーヌがこの2品である。
仕方なしマドレーヌではあるものの、しかしいつ行っても完売寸前であるため、多分、知っている人は知っているマドレーヌなのだろうと思う。

食べるたびに「違うよな・・」と思いながら食べ、しかし甘食への執念も捨てきる事が出来ない私。

今も日本の何処かのパン屋には「甘食」が売られているのだろうか・・
しかし「甘食」と文字にすると、何とも昭和臭い名を付けたと思うのは私だけか・・

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