同僚のおばちゃんの3回目の結婚式を祝して、ヘンパーティ(女子だけで結婚を祝するパーティの事)が開催された。
夜の7時半開始から、イギリス女子はワインボトルをガンガンと開けて行く。

パーティも中盤に差し掛かった頃、専務の娘で美人なJちゃんが「そろそろ彼が迎えに来るから、帰るわ」と言った。
時間はまだ11時半、みんなからブーイングが起こったものの、美人なJちゃんの彼氏がどんな顔なのか全員、興味津々。

やがて白いBMWBMWのオープンカーに乗り、彼はやって来た。
Jちゃんは「来たから帰るね~」と言い店を出て行った。

窓に張り付いて見ていた同僚達・・・何も言わずにそれを見送った。
席に戻るなり、1人が「あの男、どこの人?」と切り出した。
来た・・来た・・この感じ・・・

私は知っていた。
Jちゃんの彼がイラク人である事を。
しかし、あえて誤魔化した。

別の同僚は「インド人に見えたけど」と言う。
また別の同僚は「アラブ系かな?とにかくビックリ・・」と言う。

そうして誰かが「イラク人らしいよ」と言った。
全員「イラク?!」「何でイラク人?」と言い出す。
そんなん、たまたま好きになった人がイラク人やっただけやん・・・

そして私に飛び火するのである。
もう100回以上聞かれてきた、この質問。
「どうしてアナタは、イギリス人と結婚したわけ?」「日本人と出会いはなかったわけ?」「両親は悲しんでいるでしょう?」

いやいや・・・当然、日本人ともお付合いしましたよ。
別に外人好きでも何でもないし、外国に住みたかったわけでもないし・・
と、こんな事を説明したとて、理解しないであろう・・時間の無駄である。

美人なJちゃんの彼氏は、金髪&青目のさわやか少年と思い込んでいた同僚達。
彼がイラク人だと知ってから、Jちゃんにさえぎこちなくなり、何処から仕入れてきたのか、彼の苗字が「ムハメッド」と言うことを知り、Jちゃんを哀れむ話題で溢れている。

Jちゃんにしてみれば、何で私、哀れまれてんの?となるであろう。
彼女はマンチェスターのど真ん中で生まれ育っているから、国際色豊かな環境で育ってきた。
学校にも半分以上がヒスパニック系と中国系がいたと前に言っていたから、Jちゃんにしてみれば、どこの国籍の人と交際しようが、全く違和感がないのである。

Jちゃんは自分が話題に登っていること、ここで彼氏と何処かへ出掛けるたびにジロジロと見られる事が耐えられなくなり、8月末からドバイで暮らすと言って、辞表を出した。

噂する側に悪気はないであろう。
しかし噂された側、ジロジロと見られる側は、たまらなく嫌である事を、田舎町カーライルの人々が知る由もない。

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