今回もついのべ紹介。
前回は僕が書いたついのべの中で
分かりやすいものだけ選んで紹介したんですが、
今回はそのときあぶれたもの。
例えば読解力が必要なもの、
筆者と読者のセンスが合わないと理解できないもの、
専門用語が交っているものなど。
やはり誰にでも分かる作品は良い作品なので、
そういう意味では佳作ではないのかもしれませんが
自分で書いたのでどれも気に入っています。
分かりやすいものから始めましょう(*^-^)
人に宝石をプレゼントしたとき
ちょっと勉強したのでその知識の欠片で書いてみたもの。
『盗んだもの』
#twnovel 宝石採掘場の町の片隅。
仕事中の少年は研磨機を止め、手にしたベリルの原石に誘惑されていた。
削面から透けて見えるインクルージョンの光は風変わりで、
まるで手足を持ち、薄羽根を伸ばすかのように見えたのだ。
少年はポケットに石をしまった。
宝石ではない、妖精が欲しかったのだ。
ショートショートっぽく。
『館長の決断』
#twnovel 博物館ではその夜、肉食恐竜の化石が大暴れ。
どうも配置換えで同じフロアに草食恐竜を置いたのが悪かったらしい。
そこで館長は配置を戻したのだが、
怯えた草食恐竜は翌晩には姿を消し、事態は泥沼化。
館長はやむなく肉食恐竜を博物館の表に置いた。
狩りの本能に任せ、夜を待つのだ。
子供の頃、
大声でどなる怖いおじさんって通学路にいたなぁ。
ろくに話したこともなかったけど。
『コアラおじさん』
#twnovel 昔、近所にコアラおじさんという
あだ名の男が住んでいた。
由来は癇癪もちで妙に巻き舌、
子供を叱る声がコァラと聞こえるからだ。
無性に懐かしく、帰省の折に彼の家の垣根を覗くと、
泥棒と間違われて怒鳴られた。
非礼を詫びて土産を手渡すと、
初めて見るおじさんの笑顔は温かった。
残業のなんとなく儚い感じと夕闇。
煙は一穂(いっすい)と数えます。
『一穂の煙』
#twnovel あの彼方、山々の稜線が折り重なる合間に、
ほっそりと一穂の煙が立つ。
そこでは綺麗に枯れた花のような老女が、
昔ながらの釜戸で腰を屈めて夕飯を炊いていることを彼は知っている。
定時に屋上から生家を臨むのは習慣になった。
今日も残業だが、町一番高いこの社屋で働けて良かった。
母親って大変なんだろうなといつも思う。
『タオル一枚の距離』
#twnovel 小さな頃甘えん坊の私は
いつも母親にまとわりついていたが、
夏になると母はよく「熱いからくっつかないで」
と不快そうに私を引き剥がした。
だから夏は嫌いだった。
自分が母親になってみるとそれも分かる。
だから娘との間にタオルをはさむ。
柔らかな距離。
ふんわりタオル一枚の距離。
ややSF?
『宇宙アリ』
#twnovel 宇宙アリが地球に群がってきた。
一匹の大きさが月ほどもある奴らは、
巣穴であるブラックホールに
餌として地球を引きずり込む気なのだ。
問題は地球がもう死んでいると勘違いされていることだ。
今、第三宇宙速度でアリに担がれた地球。
震える地球。
死にかけでも、構わないというのか。
様々な愛の形。
ラブストーリーだったり、少し違ったり。
『男の奇術』
#twnovel 俺は奇術師。
指を弾けばめくるめく黄金の輝きは手の甲へ。
その実は今、掌に隠す3枚のコイン。
彼女が表と言わば両表、
裏と言わば両裏のそれを見せる必勝の火遊び。
「さぁ、表か裏か?」
「どうかしら。貴方って裏表のない人だから」
頬杖ついてうそぶく彼女。いい女は男を正直にする。
『写真家になった理由』
#twnovel 妻は生まれつきの弱視で眼鏡をかけても視力は僅か。
手元は見えても数歩先はぼやけてる。
そうとも知らず付き合い始めの頃はよく
彼女を連れてあちこち風景を見に行った。
その度「綺麗だね」と微笑んでくれた。
だから僕はカメラマンになった。
写真を渡すとあの最高の笑顔が見れるから。
『優しいアンコール』
#twnovel 迸る汗、ハコの鉄骨も歪むディストーション、
心臓を引き裂く絶唱!喰らいつくオーディエンス!
なのについてこない。
あいつのドラムスだけが追い付かない、遅れている。
女のくせに底なしの体力だと思い込んでいたが、
よく見りゃあの細腕。
いいさアンコールはお前へのスローバラード。
『開かれた心』
#twnovel 長年世界を駆け回り、
遂に彼女の黄金のハートを開く鍵を手に入れた。
さぁ俺に心を開いてくれ。
ところがなんと中は空っぽ、おまけに彼女は大激怒。
嘘だよそんなこと、初めから分かってた。
ただ伝えたかっただけなんだ。
今なら分かるだろ。
俺の気持ちは君のハートに仕舞ってきたから。
『背中合わせの彼』
#twnovel 母の死後、父の組織が私を狙う。
電光石火で現れたのは謎のおじさん。
「誰?どうして助けてくれるの?!」
「君の母さんに惚れてたんでね」
「それだけの理由で?…貴方が父親ならよかった」
「君が娘ならよかった」
敵に囲まれた絶体絶命の死地の中、
背中合わせで彼が笑うのが分かった。
初めて書いたついのべ。
『人生最高のパズル』
#twnovel 「人間がダメになる」と、
3億円当選の宝くじを迷わずシュレッダーにかけた男がいた。
その翌週に健康診断で判明したのが末期癌。
寄附してみるかと無理に笑って、
シュレッダーの箱をひっくり返す。
それが残り数ヶ月間の生き甲斐。
人生最高のパズル。誰にも言わない、時との戦い。
何かホラー書いてみようかなと思ってこれ。
『ノックの音』
#twnovel
いつものように寝室へ連れ込んだ若い女と楽しんでいると、
何故か妻の顔が思い浮かぶ。
新婚のとき二人で買ったクローゼットが視界に入ったからか。
あれは馬鹿な女だから、
留守中に自宅で何をされようと気づきもしない。
快感に酔いしれていると、目の前の家具から。
ノックの音がした。
次は本当の意味でホラー。
ハロウィンで仮装するのは本来、
あの世とこの世が繋がってしまう危険な時期に
悪霊に仲間だと思わせるためにするそうです。
#twnovel ハロウィンの夜、悪霊が溢れ返った街を歩く母娘。
仮面の下は蒼褪め、健気に仮装して俺たちを欺こうとしている。
「ヤァ兄弟、調子ハドウ?」
この町にもう他の生者はいない。
「………!…さ、最高よ…」
叫び出しそうな娘の口を手で塞いだ母親が震えた声で答える。
俺もさ兄弟。最高だ。
最後は東洋思想のような感覚がないとよく分からないかも。
“点額”という成語をご存知でしょうか。
鯉は滝を昇ると龍になるといわれ、
失敗したものは額に傷が入るのです。
また、中国では河はしばしば龍になぞらえられます。
『二つの大河』
#twnovel 滝を昇らんと志す、昔馴染みの鯉二匹。
一匹は昇りて龍となり、一匹は額に傷。
残された鯉は日々懸命に鰭を叩けど、
いつか無情の嵐に滝は崩れ、道を失う。
昇龍は友のため、身を捨て滝を抱いた河となる。
「我を昇れ」と。
後の龍、友と寄り添い身を捨てん。
彼の地に二つの大河残れり。