こんにちは

獣医師の佐藤ひろこです

 

今回は

5歳のシーズー犬

診察を通して見えてきた

“極端なダイエット”のリスクについて

お話ししたいと思います

 

 

若くして肝臓の数値が上昇した理由は?

 

まだ5歳という若さにもかかわらず

肝臓の数値が高く

飼い主さんはとても心配されていました

 

診察時には元気がない様子は

見られませんでしたが

血液検査の結果では

明らかに肝臓の数値が高く出ていたのです

 

超音波検査やレントゲンでは

明らかな異常は認められませんでした

 

とはいえ、肝臓の状態を正確に評価するには

組織を採取して病理検査を行う必要があります

 

画像検査だけでは判断が難しい臓器です

 


食生活と生活環境の聞き取りでわかったこと

 

若くて大きな異常もないのに

なぜ肝臓の数値が上がっているのか? 

 

そう思い

生活環境や食生活について詳しくお聞きしました

 

飼い主さんのお話では、

タバコの煙や芳香剤などの影響もなし

明らかに体に悪そうな食べ物も与えていない 

とのこと

 

ただ


そのシーザーちゃんは太りやすい体質ということで

もともと低脂肪の療法食を食べていました


さらに 飼い主さんは

「太っているからもっと痩せさせなきゃ」

と思い、食事の量を極端に減らしていました

その中で、ある問題点が浮かび上がってきました

 

食事制限のやりすぎが引き起こした“飢餓状態”

 

なんと、体重が6kgあるにも関わらず

体重1kgの犬向けのフード量

しか与えていなかったのです

 

つまり

必要カロリーの6分の1以下しか摂取していない状態

 

これは

シーズーちゃんの体を明らかに

"飢餓状態"にしてしまっていたのではないか

と思われます

 

肝臓は

解毒・脂肪代謝・エネルギー産生などの

重要な働きを担っています

 

エネルギー不足が続くと

肝臓は代謝のバランスを崩し

結果的に数値が上がることがあるのです

 

また

筋肉量も低下しており

筋肉が少なく「ぶよぶよ」とした

張りのない状態になっていました

 

 

このシーザーちゃんは

実はこの肝臓の数値異常が見つかってから

4ヶ月間、定期的に血液検査をしていたのですが

その間はずっと数値が高いまま

変化が見られませんでした

 

 

処方食を与えサプリメントなども

併用していましたが

劇的な改善は見られず

原因が特定できないまま時間が経過していたのです

 

 

適切な食事量への見直しと改善の兆し

そこで私は、以下のようにアドバイスしました

 

食事は引き続き低脂肪療法食を使用


必要カロリー量を再計算し

体重に合った量に少しずつ近づける

急激に増やすと消化器症状が出ることがあるため

少しずつ段階的に増量

 

具体的には

最初は1日の必要量の4分の1程度からスタートし

体調を見ながら

数日〜1週間ごとに増やしていきました

 

その結果

約1ヶ月後の血液検査で初めて明らかな数値の改善が見られたのです

 

これまでの4ヶ月間変化がなかったことを考えると

やはり極端な食事制限によるエネルギー不足が

数値悪化の原因であった可能性が

非常に高いと判断しました

 

 

「太っている=食事を減らす」ではない

今回のケースでは

飼い主さんは肥満にさせないと

愛犬を思うあまりに食事量を大幅に制限してしまったのです

 

特に処方食を使っていると

安心してしまいがちですが

“量”の調整もとても大事です

 

体型だけを見て判断せず

獣医師と一緒に

「体格」「筋肉量」「活動量」「年齢」

などを考慮した適正なカロリー計算が必要です

 

 

まとめ

・見た目だけで判断した極端な食事制限は危険
・肝臓の数値が上がったら、まずは生活環境と食事を見直す
・低脂肪食でも、量を極端に減らすとエネルギー不足になる
・少しずつ適正量に戻していくことで改善する可能性がある
・改善が見られない時は、カロリー不足の可能性も考慮する

 

肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ

なかなか症状に現れにくい臓器です

 

 愛犬が若くても

「食事量」「栄養バランス」「筋肉量」

のチェックをぜひ意識してみてくださいね