②「農薬じゃない」毒物を平気でまき散らす無農薬信者 ニコチンはほぼ全ての生物に毒性を持っており、経口摂取(口から入れて食べる場合)のLD50は3.34~50mg/kg(※)です。「LD50」とは「半数致死量」(50% Lethal Dose、略してLD50)で、物質の急性毒性を示す指標の1つです。体重1キログラム当たり、これだけ摂取すれば2人に1人が死ぬ毒性を意味します。仮にLD50が10mg/kgの物質であれば、体重50kgの人が500 mg摂取した場合、2人に1人が死に至る毒性を持つ物質ということになります。したがって、数値が大きくなるほど安全性が高くなります。 ただし実際は、実験動物による投与でその数値を出しているため、実験動物や投与方法によっても数値が異なります。ここでは、神奈川県の化学物質安全情報システム(kis-net)のデータベースから数値を引用します。※ ニコチンの急性毒性:LD50は投与した実験動物の半数が死亡する量 マウス(経口)LD50 3.34 mg/kg イ ヌ(経口)LD50 9.2 mg/kg ラット(経口)LD50 50 mg/kg また、他にも無農薬農家がよく使うものとして「木酢液(もくさくえき)」がありますが、これは毒性評価ができません。なぜなら木酢液は何百何千種類もの物質の集合体で、簡単に毒性を判断できないからです。 分かっているのは、そうした物質の中に「農薬様(のうやくよう)物質」と呼ばれる、農薬のような構造や毒性を持つ物質が多数含まれているということだけです。もちろん読者諸兄がコップ一杯分飲んだりしたら命の保証はありません。 そんな、下手な農薬よりはるかに危険な猛毒を使っているとは知らず、農薬じゃない“自然農薬”だから安全だと思っている盲目的な無農薬農家は(1)のタイプに多いのです。農薬の大半は「普通物」 では現在、日本で流通している農薬の毒性はどの程度かというと、上記に挙げた化学物質に相当する「毒劇物」は15%程度で、あとは全て「普通物」と呼ばれる毒性が低いものです(参照:住友化学HP 農薬製品の毒性別生産比率より)。 一般によく使われている農薬の中で、比較的毒性の強いものとしては、「スミチオン」の商品名で知られる有機リン・有機硫黄系殺虫剤のフェニトロチオン(MEP)があります。
