馬の骨君、君しかいない、新たに系列に入った会社の社長になってくれと言われてからの話です。君なら出しても、こちらに問題は起きないということが、君しかいないとの意味であることは、すぐに理解できました。
さて、その会社のことは全く知りませんし、商品を理解するにも、深い技術のところは難しすぎて、全く手に負えません。またグローバルに事業展開していて、中国、米国、ヨーロパに販売子会社を持っている会社ですから、そこでも社長の立場になる訳です。何より、社員を知りません。歴史のある会社ですから、社員のプライドが高く、よそ者社長には冷たく当たるだろうことも心配でした。
初日、社長室に入ると高い位置に大きな神棚があります。そこには青々とした榊が飾られ、秘書が数日おきに水を入れているようです。おかしな話ですが、これから重責を担うのに、何故か神棚がとても気に入らず、何としてもこの神棚を社長室から出したいと思ったのです。しかし、直ぐにそのことを言えば、神仏への畏敬の念を持たない、尊敬できない社長となるでしょう。神棚取り外しは、我慢することにしましたが、秘書には、高所作業になるので、榊は捨てて、水やりはやめるようにと言いました。
私には、神仏を敬うが、神仏に頼って経営するつもりはない、との思いがあったのです。
トイレはウォシュレットタイプの高級なもので、すごくきれいで良いと思いましが、どうもそこはお客様用らしく、色々な場所にある従業員トイレは、ウォシュレットタイプではなく、ちょっと古い感じのトイレでした。これは、総務部長を呼んで改善すべきと思いましたが、新任の社長の最初の指示が、トイレを直せでは軽く見られるので、これも我慢しました。
そこで自分なりに決めたことが、6か月間は何もせず、役には立たないが、害もない社長で、近づいても怖くないと思わせる戦略にしたのです。私の戦略は、その間に状況を十分に理解し、また人を知り、課題を洗い出すことにしました。第2話に続く
