自分の子どもを通わせたいと思う塾にしたら、信任してもらえるのでは。
『私が親なら絶対に欲しいと思う情報はちゃんと開示する』と最初に決めました。そして決めたら、後はその上で選んでもらえる塾にする。
① 明朗会計
オプションは、中3だけは夏期講習がマストでありますが、それ以外は基本的にホームページやパンフレットに公開してある月謝だけで全部やる。
それ以外のオプションも、後にいくつかできていきましたが、あくまでも自由選択。「あったらいいな」で作られたものですから、欲しい人だけ取ればいい。もちろん利益は度外視。というか、トントンか赤字。だって「月謝だけでやります」がスタートですから。
塾を立ち上げる最初にそれを決めてしまったので、立ち上げ数年は利益なんてまったく出ず、赤字ばかりが膨らんでいきました。家も引き払い、家財も捨てるか売るかして、塾の教室で寝袋で寝て、1週間で口に入れたものは水とじゃがいもだけ、みたいな生活が続きました。「ひとり戦時中状態」とか「火垂るの墓がリアルでわかる男」とか言われて、救援物資を持ってきてくれた友人らに笑われたものです。
② 明朗実績
分母となる卒業生数を出す。そして、分子は進学先で公開する。人数のかさ増しになってしまうため、併願合格校は記載しないし、「過去○年~△年の実績」のように、複数年をまとめたりして、ごまかそうともしない。
さらに、単年だけなら「たまたま」かもしれない。「たまたま」かどうかを判断してもらうために、常に直近過去3年間をホームページで公開することにしました。
自分が出したい情報を出すのではなく、相手が知りたい情報を出す。
やっぱり実力のある学校は、自分を大きく見せるための情報ではなく、相手が欲しいと思う情報を出しているんですよね。
日本一の高校、筑波大駒場だって、開成だって、ちゃんと分母(学年定員)を出し、併願合格者を出し、そして進学先も出すことで、人数のかさ増しが起こらないようにして、保護者が欲しい情報をより得やすくしています。
本当の実績をごまかすことなく出す。埼玉県ナンバーワンの浦和高校ももちろん出しています。
ウィルもそうでありたい。ですから、今ウィルは教室が3つになりましたけれど、合算して出すこともしていません。あくまで教室ごとに出しています。
目指すはそういった、矜持を持った学び舎。
実績が出るようになってから公開する、でも良かったのかもしれません。でも、そうすると甘えが出てしまう。だから先に公開すると決める。決めてしまったら逃げられない。見せられるちゃんとした実績が出せないといけませんから、もういきなり背水の陣。そこからは、とにかく一意専心、試行錯誤、ただひたすらにこだわり抜きました。
今ではおかげさまで、ウィルのカリキュラムをこなしてくれればどんな子でも偏差値60以上になるというものが作れていますが、最初からそうなったわけではありません。
『やらせない。無理強いしない。宿題もほとんど出さない。諭し、わかってもらえば、自分でやる。自らの力で伸びていく』なんて理想は掲げたものの、言うは易し、かなり難しかったです。
ちなみに、入塾時点でいわゆる「できる子」ばかりを取っているのではないかとやたら言われるので、入塾において学力は不問。定員となる28人までは先着順で入塾というのも公言しています。
③ 指導方針
ここは塾の肝となるところ、存在意義ですから、たとえ指導内容は変えても、方向性だけは変えていません。
指導方針は、自分で勉強できる人にすること。自分で自分をコントロールすることができる人にすること。
そのためには、やらせない。やってあげない。管理しない。
講師はあくまでコーチ。伴走者であって、助言者であること。逆上がりのやり方や自転車の乗り方を教えるかのように、ステップを小さくしたり、手を添えてあげたり、ニコニコしながら、ときに応援、ときに助言、ときに叱咤する。
自分がいなくなったら、できなくなるような支援はしない。宙船の歌のように、自分の船はあくまでも自分で漕がせないといけない。「漕いであげた方が速い。とりあえず今はやってあげて次に期待しよう」なんて先送りはしません。今より次の方がはるかに大変なことは100%ですし、なにより小さな失敗は挑んだ証だとポジティブに捉えられるよう育てたい。
「何をモタモタしてるんだ」と親はついイライラしまいます。待たなきゃダメなんてわかってる。口うるさく言うのは良くないなんてわかってる。でも、つい要求してしまう。手を貸してしまう。自分だって自分の子にはそうなってしまう。だからこそ親と同じじゃ意味がない。それはプロじゃない。
なんでもそうですが、やってあげたらやれるようにはなりません。「おまえのオールで漕いでいけ!」「おまえのオールを他人に任せるな!」と、時に鼓舞し、時に寄り添い、時に諭し、時に見守る。これがウィルの掲げる指導方針。
その指導方針の下に、様々な指導内容やシステムがあり、その一つ一つが生徒の学力を伸ばすために必要なものだと確信しつつも、もっと良い方法はないかと日々振り返り、指導内容やシステムについてはマイナーチェンジを繰り返しています。
ウィルのシステム
講師が全員卒業生であること。
講師は皆、教室長が教え、育てた生徒たちの中で、戻ってきて恩返しがしたいと言ってくれる自慢の教え子たちです。 彼らにとってウィルは母校ですし、生徒たちは後輩ですからね。それはもう一生懸命にやってくれます。本当に宝物のような子たちです。彼ら無しではウィルのシステムは機能しません。
定員制は多数派を取ることで引き寄せられる。
人は本質的に、他人に言われて変わることはない。あくまでも自分で気づいて、納得して、危機感を感じて変わるものだと思っています。
定員制は多数派を作ることで気づかせることができます。クラスのみんながそうであることに、自然と流れようとする同調圧力を、ポジティブに利用できます。
19年間で、全員の平均偏差値が60を超えなかったことは1回だけという伝統。
ウィルの方針が固まって、形が概ねできあがった2007年から18年、23期生だけ59.8と偏差値60に届かなかったことがありますが、他はすべて超えています。
しかも、これがウィルの指導方針によるものであって、講師の技量に頼っていないことを証明するように、のちに作られた新所沢教室でも、所沢教室でも、偏差値60の公約は途切れたことがありません。
そうなると、生徒たちは「自分もそのくらいにはなるんだろうな」と思うようになります。
「ウィルでトップ5人に入れば、県内トップ校には行けるのか」とか「ウィルで真ん中なら所沢北あたりかな?」とか、先のイメージができる。これは大きな強みでしょう。
最後に
親にとって、もっとも大切なもの、それは家族ではないでしょうか。
そしてお金や仕事もまた、家族を守るために大切なものです。
その大切な家族、その中でより大切な子どもの「今」の時間と「未来」を託す。大切なお金を払って。それが塾を選ぶということだと私は考えています。
だからこそ、親が求める情報は隠すことなくしっかり公開したい。
信頼というものは、そういうところから生まれてくると思うから。
その上で、選んでもらえるような塾にしていく。 この順番を間違ってはいけない。そう考えて26年やってきました。 私も50歳を過ぎました。いつまでも現場にいては後進が育ちません。ちょうど出版の声もいただいていますし、いい頃合いかもしれません。
若者には経験はない。しかし漲る活力と、生徒を引き寄せる熱意がある。確かに、今の自分にはもう「一人戦時中状態」はできないし、本を読み漁り過ぎて寝落ちで回転椅子から転げ落ちるみたいな没頭力もない。ならば、足りない経験を後からしっかり伝えて、支える立場になろうと思っています。