幼い頃に母を亡くし、父の手一つで育てられてきた自分だから感動するわけじゃない。
 
子どもには、あまりにも当然すぎて、なにかきっかけでもないと親の気持ちには気がつけないかもしれない。
 
いて当然、やってくれて当然。
 
バカやろう。
 
当然なんてものはないってことをわかる人になりましょう。
 
人はいつ死ぬかわからないんだから。
その1

俺、小さい頃に母親を亡くしてるんだ。
それで中学生の頃、恥ずかしいくらいにグレた。
親父の留守中、家に金が無いかタンスの中を探しているとビデオテープがあったんだ。
俺、親父のエロビデオとかかな?なんて思って見てみた。
 
そしたら・・・病室のベットの上にお母さんが映ってた。
 
『〇〇ちゃん二十歳のお誕生日おめでと。なにも買ってあげれなくてゴメンね。お母さんがいなくても、〇〇ちゃんは強い子になってるでしょうね。今頃、大学生になってるのかな?もしかして結婚してたりしてね・・・』
 
10分くらいのビデオテープだった。
俺、泣いた、本気で泣いた。
次ぎの瞬間、親父の髭剃りでパンチパーマ全部剃った。
みんなにバカにされるくらい勉強した。
俺が一浪だけどマーチに合格した時、親父、まるで俺が東大にでも受かったかのように泣きながら親戚に電話してた。
そんで、二十歳の誕生日に、案の定、親父が俺にテープを渡してきた。
また、よく見てみたら、ビデオを撮ってる親父の泣き声が聞こえてた。
お母さんは、笑いながら『情けないわねぇ』なんて言ってるんだ。
俺また泣いちゃったよ。
父親も辛かったんだろうな。
親父にそのこと言ったら、知らねーよなんて言ってたけど、就職決まった時、親父が『これでお母さんに怒られなくて済むよ』なんていってた。
俺このビデオテープがあったからまっとうに生きられてる。


その2
 
私の母は昔から体が弱くて、それが理由かは知らないが、母の作る弁当はお世辞にも華やかとは言えない質素で見映えの悪い物ばかりだった。
友達に見られるのが恥ずかしくて、毎日食堂へ行き、お弁当はゴミ箱へ捨てていた。
 
ある朝母が嬉しそうに「今日は〇〇の大好きな海老入れといたよ」と私に言ってきた。
私は生返事でそのまま高校へ行き、こっそり中身を確認した。
 
すると確かに海老が入っていたが殻剥きもめちゃくちゃだし彩りも悪いし、とても食べられなかった。
家に帰ると母は私に「今日の弁当美味しかった?」としつこく尋ねてきた。
 
私はその時イライラしていたし、いつもの母の弁当に対する鬱憤も溜っていたので、「うるさいな!あんな汚い弁当捨てたよ!もう作らなくていいから」とついきつく言ってしまった。
 
母は悲しそうに「気付かなくてごめんね…」と言いそれから弁当を作らなくなった。
 
それから半年後、母は死んだ。
私の知らない病気だった。母の遺品を整理していたら、日記が出てきた。
中を見ると弁当のことばかり書いていた。
 
「手の震えが止まらず上手く卵が焼けない」
 
そして、日記はあの日で終わっていた。
 
「今日は〇〇の好きな海老を入れた。相変わらず体が思うように動かなくてぐちゃぐちゃになったけど…喜んでくれると良いな」
 
何で食べてあげなかったんだろう…今でも後悔と情けなさで涙が止まらない。

 
その3
 
私の家は、俗に言う父子家庭でした。
お父さんはとにかく家事が出来ませんでした。
それはもう、笑っちゃうくらい。
お弁当に入れる卵焼きさえ、いつも黒焦げでした。
私はそんはお弁当を友達に見られるのが嫌でいつも隠れて捨てていました。
包丁なんてまともに使えないくせに、無理してウインナーをタコの形に切るんです。
りんごがあればうさぎの形に。
ニンジンなんかは、とっても歪なハートの形に。
いつもお父さんは朝早く起きて、私のためにお弁当を作るんです。
私が誕生日を迎えた日にも相変わらず、お父さんはお弁当を渡してきました。
私はいらないと言ったのですが、それでも無理矢理持たされました。
しかし、その日も結局、友達に見られたくないという恥ずかしさから、私は登校中にそれを捨てました。
そして何事もなく学校が終わり、家に帰宅すると、
「どうだった?今日の弁当」
お父さんがどこか浮き足だった様子で、私にそんなことを聞いてくるのです。
「ハッピーバースデーって文字の形、海苔で作るの大変だった」
お父さんはにこにこと、嬉しそうに言いました。
それを聞いて、私は泣きました。
私のために毎日欠かさず、一生懸命作ってくれたお弁当。
それから、私は毎日お父さんのお弁当が楽しみになりました。
ボロボロのタコウインナー。
傷だらけのりんごのうさぎ。
欠けたハート型のにんじん。
どれもこれも、私の大好物になりました。
友達に思い切り自慢してやりましたよ。
私の大好きなお弁当だ!って。
それから時間は経って。
今では、娘の顔さえ忘れるほど年取ったお父さんに、今日も私はお弁当を届けています。
いつも、全部食べてくれてありがとう。
お父さんのお弁当、また食べたいよ。


人はいつ死ぬかわかりません。
もしかしたら、今日帰らぬ人になるかもしれません。
 
妻の親戚に、願っても子どもができず、でも、夫婦二人きりで、まるで恋人同士のように寄り添っているご夫婦がおりまして、よくそのご夫婦のようになりたいねって話をしていたのですが、一昨日、旦那さんが亡くなったとの報告を突然受けました。
 
ご夫婦の趣味の旅行、飛騨高山へ2人旅、旅館で互いに温泉へ入った際に、旦那さんは心不全で亡くなられたそうです。
 
『温泉から上がったら2人で部屋でビールを飲もうねって言ってたから…そのビールは飲まずに持って帰ってきちゃった。』
 
奥さんはそうおっしゃられたそうです。
 
人はいつ死ぬかわかりません。
病気に限りません、事故だってありえます。
 
大切な人には、心を込めて大切に思う気持ちを伝えていたいですね。