#4 確かめたい。

「それがおじさんの願い?」

ふいに少年がまるで俺の心を見透かしたように、
下のほうから俺を見上げてそう囁いた。

何故だろう。心なんて読めるはずもないのに。
「そうだな。」と頷いてしまったのは。

「コータさんとケースケさんは思い合ってるんだね。」

そういうと少年はいきなり踵を返して走りだした。

小さな紙切れをその場に残して。
これが俺に渡したかったものだろうか。

だがー。どうしてコータと俺の名前を知っていたんだろう。
それこそ本当にコータに会っていたから?
本当にサンタクロースで、俺の心が読めたんだろうか?

有り得るはずがない頭では分かってるのに、
ちゃんと少年が何なのか自分の手で目で確かめたくて。

もしかしたら信じたくて。

小さな紙を拾い上げると、読むことよりもまず少年が走り出したほうへと体が動き始めていた。

そのまま店のフロアーを突き抜けて、先をゆく少年の背中を追いかけて
階段を上り詰めていく。

この先は屋上になっている。
つまり行き止まりと一緒だ。
それこそトナカイを待たせてあの少年がソリで飛び降りる勇気でもない限りー。

#3 俺しかいない。

FROM:広太
TAITLE;。。。

今日会えるかな?

ーワリい。

コータからのメールに、心の中でそう呟く。

もうどのぐらいちゃんと相手できてないんだろう。
申し訳なさ半分と忙しさにかまけてるうちに
ついこの間12月が始まったと思ったら、
いつの間にかクリスマスだ。

商業都市:六賀(ろくが)。
この街の中心を流れる川沿いに建つ商業複合ビル。
リバーシティ。

年が明けてからの目玉になるはずの
南側の1階~3階までのフロアーを使っての某ブランドの巨大ストアのリニューアル工事が大幅に遅れているのだ。

恐らく年内は休みはないかもしれない。

コータ、どうしてんだろうな。
ちゃんと家に帰り着いてるといいんだけど。
あいつ。。。。

「おじさんっつ。おじさんってばー。」

誰がおじさんじゃ、誰が。
内心、そう思いつつ声のしたほうを反射的に振えろうとした。

んー。待てよ。
このフロアーには俺しかいないはず。

気のせいか。
思い直して踵を返そうとしたそのときもう一度声がした。

「僕はサンタ。おじさんに届け物があるんだ。」

今度こそ声のしたほうを振り返る。
そこにいたのは小さな少年だった。


「おーい。ちび、どっから入り込んで来たんだ?」

そういうと少年は不服そうに、でも少し安心したかのよう顔を歪ませた。

「よかったー。やっと気づいたくれた♪
でも、ちびじゃないよ。サンタ。おじさんサンタクロースって知らないの?」

「あのなー、それくらい俺だって知ってるって。それにおじさんでもないぞ。」

「じゃぁ、おあいこだね♪」

そういって少年はくすくすと笑った。
あれ、こいつコータみたいだな。

そうだ。あいつもこんなふうにキレイに笑うんだ。
大人になると、他意をもってしまってこんなに純粋にーただそうだから笑っている-っいうのは難しくなる。

でも、コータはそれが出来るんだ。
その無垢な少年ぽっさを失わないところがたまらなくかわいくて。
けど最近みてないなー。
アイツの笑顔、久しぶりに見て。
抱きしめてやりてー。
あいつ淋しがりやだから。

#1もしも、届くのなら。


「今日はクリスマスだよ?おにーちゃんは何を願うの?」

下のほうから子どもの声がした気がして、足元のほうへを視線を動かす。

そこには小さな少年が立っていた。


ーこんな時間にー?一人で?迷子?

「僕、お母さんは?」

「ううん。僕はサンタ!!
おにーちゃんの願いを叶えてあげるんだ。」

うーん。少し弱ったけど、泣かれても困るし
仮に泣かれたとしたら、こんな髭面男なんてそれこそ不審者だ。
ここは小さな彼に付き合うことにして、駅前交番まで連れて行こう。

「うん。ありがとう。」

「おにーちゃんの願いを教えて?」

「うーん。おにーちゃんはねぇー」

そこまで言いかけて、言葉につまった。

ー僕の。
僕の願いって何だろう?

今日、絶対ムリをしてもらってまでケースケと会うこと?
今日、会わなければこの恋は終わるのかな?

でも、本当はー。
分かってる。

そういうことじゃないんだ。
好きなひとを思うって。

だから、僕の願いは、ケースケに伝えなきゃいけないのはー。

「じゃぁ、お願いしようかな。おにーちゃんの大切なひとに伝えて欲しいんだ。」

×××××ーって。

「じゃぁ、これに書いて?ぼくが届けてあげるから。」

そう言って彼が渡してくれた小さな紙にケースケへの言葉をしたたてめて2つに折って彼に渡す。

もちろんこの小さな少年が届けてくれるなんて本気で思ってるわけじゃない。

だけどー。
サンタクロースが僕らの気持ちを結んでくれる。
こんな日ぐらいそんな奇跡が起こってもいいんじゃないかと夢を見るのもきっとわるくないー。

まっすぐに見上げる彼の瞳は、僕ら大人が失くしてしまった輝きに満ちていたから。

「じゃぁ、ぼくがケースケさんにちゃんと届けるから♪」

「うん。お願いす---」

あれ。僕、ケースケの名前教えたっけ?
言いかけた言葉を疑問が遮った瞬間、
その不思議な少年は僕にとても眩しい笑顔を見せて、
雑踏へと駆け出して行った。

慌てて追いかけようとしたけど、
全力で走っても彼に追いつくことは出来なかった。
掻き消えるっていうのはこんなことを言うのかもしれない。

もしかしたら、近くに母親でもいたのかもしれない、
そう思いなおして僕は家路につくことにしたー。