#6 手の中に残った手紙2。

この街には珍しい雪の降るクリスマス。
もしかしたら、これも誰かが願った奇跡なんだろうか。

そう言えば、誰かが言ってたなー。

-どんな奇跡も、起こってしまえばそれは奇跡じゃない。
現実なんだと。

「ってことは、あのちびもサンタってことでいいのか」。

自分でも思ってみなかった渇いた声がふいに口をついた。


もう、降参だ。
ここは諦めて信じるしかない。

それも変な言い回しかもしれないが。

ーはは。

なんだか可笑しくて、唇の端がつりあがって思わず笑みが零れる。


どれだけ疑おうとしても、握り締めた左手に"消えたちびが"残していった証拠があるのだから。

ゆっくりと手を開いて、紛れもないー。
コータからの手紙を小刻みに震えるてをなんとか押しとどめて視界に持ってくる。

コータの字がそこには確かにあった。
コータの想いがそこから確かに溢れ出す。

#5 手の中に残った手紙。


追いつけると思った。

勢いよく屋上へと通じる扉を開けた。
そこに少年はいるはずだった。

だけど、タッチの差だった。

「じゃぁ、おじさんの願い叶えてあげるね♪」
そう言って、俺にとって眩しいくらいのーどことなくコータに似たーあの笑顔を向けるといなくなった。

例えるなら、こういうことを掻き消えるというのかもしれない。
あまりのことに呆然とするしかなくて、息を整えるのも忘れてそのままずるずるとへたり込んだ。




ひとが消えるなんて有り得ることじゃない。
ーでも、ちびは消えた。

あとに残されたのは、コータからという手紙と俺だけ。

クリスマスだからだろうか。
街行く人々の喧騒が此処まで届いてくる。
その中にこうしてひとり取り残されるっていうのは
何処か物悲しい気がした。

夕方までは晴れていたのに、
いつの間にか降り出した雪がイルミネーションに沸き孵る街に
はらはらと舞い散っては積もっていくー。

まだあがったままの息を押し殺して、
まるで喧騒に吸い寄せられるように
屋上の縁まで歩いてフェンスを握って何とか起立する。

こうして見下ろす街は、驚くほどきれいだった。
きっと2人で見たならー、そう思わざるをえないほどに。


#4 確かめたい。

「それがおじさんの願い?」

ふいに少年がまるで俺の心を見透かしたように、
下のほうから俺を見上げてそう囁いた。

何故だろう。心なんて読めるはずもないのに。
「そうだな。」と頷いてしまったのは。

「コータさんとケースケさんは思い合ってるんだね。」

そういうと少年はいきなり踵を返して走りだした。

小さな紙切れをその場に残して。
これが俺に渡したかったものだろうか。

だがー。どうしてコータと俺の名前を知っていたんだろう。
それこそ本当にコータに会っていたから?
本当にサンタクロースで、俺の心が読めたんだろうか?

有り得るはずがない頭では分かってるのに、
ちゃんと少年が何なのか自分の手で目で確かめたくて。

もしかしたら信じたくて。

小さな紙を拾い上げると、読むことよりもまず少年が走り出したほうへと体が動き始めていた。

そのまま店のフロアーを突き抜けて、先をゆく少年の背中を追いかけて
階段を上り詰めていく。

この先は屋上になっている。
つまり行き止まりと一緒だ。
それこそトナカイを待たせてあの少年がソリで飛び降りる勇気でもない限りー。