#1会えない、クリスマス。
to:慶介
title:。。。
今日、会えるかな?
メールを送った後しばらくケータイを見つめたまま
ため息をひとつついた。
忙しいひとなんだってことは分かってるつもりだったけど
今日はクリスマスなんだよ?
もう一ヶ月も同じ街に住んでいながら会えてない。
それってちゃんと付き合ってるのか不安になるよ。
送りたいことはたくさんあるのに、
言ってはいけないことなんだろうって気がして、
言っちゃったら、困るだろうから、重たいかもしれないし、
そんなふうについつい躊躇して言えない思いがたまっていく。
12月24日。
世間様はクリスマスで浮かれきってるっていうのに
僕の心は冷え切ってる。
ケースケと出会ったのは今年の夏。
八月の行きつけのバーが某海岸で主催したバーベキュー大会。
マスターが僕らのことを「タイプでしょ?」っていって
隣同士に座らせたことから始まったんだ。
酒の席ってこともあったのか、妙に話が弾んで。
回りのはやし立てる声のせいもあったのかもしれないけど、
なんとなくその場の雰囲気ってやつで即席カップルっぽくなった。
夕闇が迫る頃、どちらともなく一団から離れて波打ち際で話した。
「俺さー、コータくんのことマスターに紹介されるよりまえに最初に集合場所で見かけたときからカワイイなって思ってたんだ。だから隣同士になって内心すげードキドキしてた(笑)♪」
そう言って、屈託のない笑顔で頭を撫でられた。
両腕を僕の背中に回してはハグをした。
その手がすごく暖かくて、その瞬間恋に落ちたんだ。
そこから先はお決まりのコースってやつで、
ケースケの車でお持ち帰りされて。
ケースケの部屋でキスをして、抱き合って、腕の中で眠った。
いわゆる夏恋ってやつだったのかもしれない。
だからこの冬はセオリー通り越せなくても仕方ないのかな。
夕刻を過ぎて、あっというまに宵闇が迫る頃。
あたりの空気が深々と冷えて雪が降りだした。
ホワイトクリスマス-、か。
この街で雪が降ることは珍しいことで、
もし隣にケースケがいたら
年甲斐もなくはしゃいでしまって
ケースケに困ったような笑顔をされるんだろうけど
今日は雪が降ってもただ寒いだけだ。
いい加減ケータイをしまって駅前から立ち去ろうとしたとき
不意に誰かにスーツのすそを引っ張られた気がした。