<③のつづき>
機動隊の投光車がまぶしい光でこちら側を照らしている。
その眩惑の向こう、投光車の上に黒いコート姿の男が立っている。
カメラをこちら側に向けて…。
§
僕は国会前から、国会裏の議員会館側へと移動することにした。
国会議事堂に隣接する歩道がすべて封鎖されているため、
移動するには、少し大回りのルートを通らなければならない。
暗い道を歩く、交差点には数名の警察官が立っている。
… 公安?
あの黒いコート姿の男の事を思い出す。
遠くで怒鳴り声がして、ふと、そちらに目をやってみる。
人気の少ない交差点で、初老の男が警察官にまくしたてていた。
歩道の封鎖に納得がいかない…、といったところだろうか。
§
国会裏交差点から議員会館前へ。
そこには大きな垂れ幕、そしてたくさんののぼりが立っている。こちら側には俗にいう「市民団体」が集まっているのだ。「革命○○連合」とか、「○○労組」とか、そんな感じの人たちだ。
… あ~、そういうことか。
国会前に集まっている一般市民が、何かのレッテルを貼られないように、彼らは敢えて、この国会裏に場所を分けて活動しているのではないのか…。
「市民団体」と言っても、何か特別な感じ…、はしなかった。
国会の裏側で活動している彼らの方が、コールが多彩で、時折入るトークが場馴れしている。語弊はあるかもしれないが、何だか少し「楽しそうな」感じがする。
§
そろそろ終電の時間も近い、僕はその場を去ることにした。
Taxi Driver Theme / Bernard Herrmann 1976
途中駅で、明らかに酒に酔った男が、駅員に大声を出している。
日常で僕らは、実に多くの不条理に遭遇する。
その不条理は怒りへと変わる。
僕たちはその怒りを、あきらめや慣れ、誰かとのコミュニケーション、何がしかの快楽など、それぞれが何かの方法で、やり過ごしている。
デモに来てみるとわかる、
多くの怒りは、「市民の意思」へと昇華しているのだ。
僕はそう思った。
黒いコート姿の男が何者なのか知る由もないが、
彼はカメラを向けるところを、間違っている。
彼らの「対象者」なんて、ここにはいない。
§
終電で最寄り駅に着く、人もまばらだ。
いつものようにカードをタッチして改札を過ぎる。
… んっ!!
僕は立ち止まり、振り返る。
… まさか、いるわけ、ないよな…。
イヤな時代になるかもしれない。
<「後 想」へ>