国会前のデモにいってみた。 ④ | 追憶の骨 (bones)

追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。

<③のつづき>


機動隊の投光車がまぶしい光でこちら側を照らしている。

その眩惑の向こう、投光車の上に黒いコート姿の男が立っている。

カメラをこちら側に向けて…。


  §

僕は国会前から、国会裏の議員会館側へと移動することにした。

国会議事堂に隣接する歩道がすべて封鎖されているため、
移動するには、少し大回りのルートを通らなければならない。

暗い道を歩く、交差点には数名の警察官が立っている。

… 公安?

あの黒いコート姿の男の事を思い出す。

遠くで怒鳴り声がして、ふと、そちらに目をやってみる。

人気の少ない交差点で、初老の男が警察官にまくしたてていた。
歩道の封鎖に納得がいかない…、といったところだろうか。

  §

国会裏交差点から議員会館前へ。

そこには大きな垂れ幕、そしてたくさんののぼりが立っている。こちら側には俗にいう「市民団体」が集まっているのだ。「革命○○連合」とか、「○○労組」とか、そんな感じの人たちだ。

… あ~、そういうことか。

国会前に集まっている一般市民が、何かのレッテルを貼られないように、彼らは敢えて、この国会裏に場所を分けて活動しているのではないのか…。

「市民団体」と言っても、何か特別な感じ…、はしなかった。

国会の裏側で活動している彼らの方が、コールが多彩で、時折入るトークが場馴れしている。語弊はあるかもしれないが、何だか少し「楽しそうな」感じがする。

  §

そろそろ終電の時間も近い、僕はその場を去ることにした。


Taxi Driver Theme / Bernard Herrmann 1976


途中駅で、明らかに酒に酔った男が、駅員に大声を出している。


日常で僕らは、実に多くの不条理に遭遇する。
その不条理は怒りへと変わる。

僕たちはその怒りを、あきらめや慣れ、誰かとのコミュニケーション、何がしかの快楽など、それぞれが何かの方法で、やり過ごしている。

デモに来てみるとわかる、

多くの怒りは、「市民の意思」へと昇華しているのだ。

僕はそう思った。


黒いコート姿の男が何者なのか知る由もないが、
彼はカメラを向けるところを、間違っている。

彼らの「対象者」なんて、ここにはいない。

  §

終電で最寄り駅に着く、人もまばらだ。

いつものようにカードをタッチして改札を過ぎる。

… んっ!!

僕は立ち止まり、振り返る。

… まさか、いるわけ、ないよな…。


イヤな時代になるかもしれない。




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