終 宴 ③ | 追憶の骨 (bones)

追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。




時は1980年、時代は確実に変わっていた。


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僕は1枚だけ、レッド・ツェッペリンのオリジナル・アルバムを

その発売当時に買うことができた。

「In through the Out Door」、1979年の事だ。

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そのレコードは、紙袋の素材でできたカバーで包まれていて、
開けると、セピア色の写真、特徴的なジャケットが出てくる。

     


今日はこの中からいきましょう。


All my Love  / Led Zeppelin  1979

僕がレッド・ツェッペリンを聴き始めた時、バンドは休止状態だった。
ロバート・プラントの息子が早逝したためだと言われている。

このアルバムは、その沈黙を破った作品であり、
このバラードは、ロバートが息子にささげたものだそうだ。

シンプルで、実にいい曲だ。

過度な情感を抑えた曲調、少しサラッとした感じのヴォーカル、
アコースティック・ギターのソロのアレンジ…、どれも素晴らしい。

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PV映像もネットもない時代の話である。
あるのは雑誌の記事と、そしてレコードだけだ。

「ライブ見れない以外は、今とそんなに変わらないじゃん~。」

70年代を実体験できない…、その空虚感を僕が話したとき、
友達が慰めるように、そんなことを言った記憶がある、

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待ちに待って買った、この 「In through the Out Door」。しかしこれを、
「ロックかじりかけ」の少年が理解するには、少々無理があった。

このアルバムは、レッド・ツェッペリンだが、ロックじゃない。

最初に聴いた時の、がっかり感 …。

でも、この「がっかり感」、それこそが実体験の本質なのだ。

このアルバムは曲調が様々で、個人技は極力控えめだ。
よく聴くと、シンセサイザーのアレンジがとてもよくできている。

レッド・ツェッペリンがロックから、「何か次のもの」へ移行する、
そのための過渡期の模索ではないか…。

そんな理解ができたのは、買ってから数年してからのことだ。

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ギターのエッジを効かせた  「Communication Breakdown」
レコーディング技術の結晶、「Whole lotta love」
ギター・オーバーダビングの金字塔、「Stairway to Heaven」

圧倒的な演奏力と、革新的な音楽性。

それまで、世の中になかった音。

ロックという音楽が最先端だった…、

そんな時代に、こんな音楽を聴いたとしたら、

その時、僕は何を感じたのだろう…。

 §

ジョン・ボーナムが死亡して数か月後の1980年12月

レッド・ツェッペリンは解散を宣言する。


僕が会場に着いたときには、宴はすでに終わっていた。

そして、この解散宣言で、その会場からも

永遠に締め出されてしまった。


<おわり>