自虐日記21
映像の世紀「戦後零年」を見る。冒頭に坂口安吾の『堕落論』からの引用がある。しかし、例えば「たえがたきを忍び、忍びがたきを忍んで、朕の命令に服してくれといふ。すると国民は泣いて、外ならぬ殿下の命令だから、忍びがたいけれども忍んで負けやう、と言ふ。嘘をつけ! 嘘をつけ! 嘘をつけ!」のような言葉は一切引用されない。歴史的欺瞞や天皇制のカラクリを痛烈に批判する言葉は引用されず、「こまった」などという件ばかり。
286万人 家を失くす 134箇所の闇市 尾津喜之助 みかじめ料 日本軍の、天皇の、外務省の・・・膨大な隠匿物資 早慶戦 市街地の半分焼失 一日六人の死者、上野の惨状 56万人の未亡人 映画「そよかぜ」検閲通過 林檎の歌「けったくそが悪い歌」米軍のための特殊慰安協会 RAA 淫売屋 ガード下のパンパン 天皇巡幸「あっ そう」 璽宇 天照皇大 戦争犯罪人・岸信介の復活と25万人の食糧メーデー
「新たな戦前」などというタレントの吐く暴言が、まことしやかに受け止められ、つい〈そうかも?〉などと思ってしまう。実に、実に良くないことだ。しかし、自分もへらへら乗っかってつい楽しんでしまう電脳空間は、まさにあらゆる不都合を隠蔽している。暴露するように装いつつ、すべてごちゃ混ぜにして節操をなくすことで、肝心なことは多く自主規制し、とどりつまりは隠蔽に成功しているから、実に巧みだ。そうだとうすうす感じながら、政治屋のように徒党を組み、気まぐれそのものの仲間を引き寄せようとしているだから、私もどうしようもない。ご馳走を並べ、美しい花や風景を並べ、贅沢な趣味に現を抜かす自慢話もどきの出来事をたまにひけらかし、お互いに「いいね」し合って、悦に入っている。その一人が私だ。
ああ・・・あの「はだしのゲン」のように、ストレートに、直接的に世界に突き刺さろうとする表現力が欲しい。チマチマと四畳半で、あたかも、あたかも繊細な心情を吐露したり、逆に日常と隔絶するようにアイロニカルな悪意ばかりをしれっと撒き散らしつつ、とどのつまりは大小の党派の渦に隠れて、仲良しこよしでルンルンしているような、本質的には自閉しているクソ(自称)詩人もどき連中にも反吐を吐きたい。と書きつつ、私はヘボ詩を書く快楽につい耽溺してしまう。〈ヤドリギ〉金子そのままではないか。つまりは、無能力者のルサンチマンということ・・・ケッケッケッ!