植民地主義フェミニズムを封じ込めよ――女性に対する暴力撤廃の国際デーに | ヤドリギ金子のブログ

植民地主義フェミニズムを封じ込めよ――女性に対する暴力撤廃の国際デーに

 

パレスチナ・フェミニスト・コレクティヴ

2023年11月25日

(試訳:早尾貴紀)

 

 女性に対する暴力撤廃の国際デーを記念して、パレスチナ・フェミニスト・コレクティヴ(PFC)は、フェミニズムの同志闘争者のみなさんと、そしてすべての良心のある人びとに対し、きっぱりと植民地主義フェミニズムを封じ込めるよう呼びかけます。植民地主義フェミニズムとは、侵略、大量虐殺、軍事占領、資源収奪、労働搾取を正当化するために、女性を解放するという表現を展開する欧米および植民地主義の言説と政策を指しています。植民地主義フェミニズムは、パレスチナの女性を、彼女たちの文化、社会、宗教から救われる必要のある無力な犠牲者として描くと同時に、彼女たちを使い捨て可能で、脅威で、死に値する存在とみなしています。このような二重の戦術が合わさって、現在進行中のシオニストによるパレスチナの郷土の占領、パレスチナ人同胞の追放、パレスチナ人の生活上での終わりのなき戦争を正当化しているのです。私たちは、「パレスチナはフェミニズムの問題である」[2021年にPFCが出した声明]ということを再確認し、フェミニズムはシオニズムと相容れないものであると断言します。

 

 ジェンダーと性的暴力は入植者植民地主義(セトラー・コロニアリズム)に不可欠なものであり、それは先住民を排除し、先住民の土地を奪い、先住民の抵抗を抑圧しようとすることを意図しています。パレスチナにおいては、シオニストの入植者植民地プロジェクトは、人口構成上の不安によって駆り立てられており、その不安は、パレスチナ人女性の身体、セクシュアリティ、生殖能力を、安全保障上の脅威に仕立て上げているのです。パレスチナ人の母親は「問題事」と暗にみなされ、生殖[リプロダクト=出産・育児]にかかわる公正さと安全を組織的に否定されています。こうしたことを背景として、イスラエルという入植者国家は、自らを女性やLGBTQコミュニティにとって安全な避難場所であると偽っています。イスラエルのプロパガンダは、私たちが日常的に、見境なく、そして身体の自律性を無視して、暴力を受けているまさにその瞬間に、私たちのことを暴力的で反動的な存在として描いているのです。

 

 10月7日以降、私たちが目の当たりにしてきたのは、シオニスト指導者、欧米の報道機関、リベラルなフェミニストたちがガザ地区の全住民の人間性を奪いながら、リベラルで、オリエンタリズム的で、植民地主義的なフェミニズムの形象が復活していく姿でした。この文脈において、パレスチナ人男性は、淫らで残忍な侵略者、性犯罪者、自分の子どもを人間の盾にする無慈悲な父親として描かれてきました。シオニスト政権は、こうした人種差別的な性的言説を利用して、ガザ地区におけるパレスチナ人の大量虐殺の推進を正当化する一方で、パレスチナ全土において、集団逮捕や性的屈辱や拷問の組織的活動を通じて、ジェンダー的・性的暴力行為を行なってきました。網羅的なものでも、目新しいものでもありませんが、こうした暴行や危害を証明する証言や文書には次のようなものがあります。

 

◆ガザ地区のパレスチナ人約1万5000人の惨殺、そしてそのうち7割以上が女性と子どもであるために、アントニオ・グテーレス国連事務総長をして、ガザ地区は子どもたちの「墓場」になっていると言わせることになりました。私たちは、パレスチナ人であるというだけで殺された何千人もの男性たちに対しても、平等に哀悼の意を表します。彼らは私たちの同志であり、兄弟であり、父親であり、愛する人たちです。

◆ガザ地区で大虐殺が繰り広げられるなかで出産を控えた5万人の妊婦たちは、自分たちの状況を「ホラー映画」と呼んでいます。彼女たちは、麻酔も鎮痛剤もないまま帝王切開を受けさせられたり、[医療用の]無菌状態ではないなかで出産させられたりします。生理用ナプキンが手に入らないために、女性や少女たちは避妊ピルに頼って月経周期を止めることもあるのです。

◆10月7日以降、ヨルダン川西岸地区、エルサレム、1948年占領地[1948年にイスラエル領となった地域]での継続的な逮捕キャンペーンの一環として、100人以上の女性が逮捕・拘留されました。何人かは釈放されましたが、84人ほどの女性囚人が拘留されたままです。これには次の人びとが含まれます。10月26日に暴力的に逮捕され拘束されたヘブロンのパレスチナ人作家ラマ・ハーテルは、拘留中にイスラエル兵からレイプすると脅されました[12月2日に釈放]。11月6日に逮捕されたナビ・サレハ村のアヘッド・タミーミーは、ソーシャルメディア上で「テロを扇動した」罪で告発され、現在も行政拘留されています[11月30日に釈放]。ナブルスのジャーナリストであるソマヤ・ジャワブラ[11月5日に逮捕]は3児の母で妊娠7カ月でしたが、11月12日に釈放されるも、無期限の自宅軟禁とインターネットの使用禁止という条件を課されました。

◆ここ6週間で、200人以上の子どもたちが逮捕・拘留されました。毎年500人から1000人のパレスチナの子どもたちが整然と逮捕され続けています。セーブ・ザ・チルドレン・パレスチナの報告書によると、パレスチナ人の子どもたちは、肉体的、精神的、性的な暴力にさらされ、家族との面会も阻止されています。

◆パレスチナ人囚人に対する性的虐待と拷問があります。10月21日、報道各社は、ヨルダン川西岸地区で3人のパレスチナ人男性が裸にされ、殴打され、兵士がそのうちの1人に物体を挿入しようとしたと報じました。彼らを拷問した兵士たちはビデオや写真を撮っており、パレスチナ人を服従させるための性的暴力の使用が明確になりました。

◆シオニスト兵士は、ガザ地区にいる性的マイノリティのパレスチナ人を暴露すると脅して、彼らのコミュニティの内通者[スパイ]になるよう強制しました。

◆米国やカナダでは、親イスラエルの支持者たちが、パレスチナ人や親パレスチナの抗議者に対し、身体的・性的危害を加えるよう呼びかけました。

◆ 11月20日、トゥワニ村地域でのシオニスト入植者と兵士による虐待を記録しているパレスチナ人と国際ボランティアに対して、身体的、性的、言語的な虐待が加えられました。

 

 これらの例は、包括的なものではありませんが、ジェンダー暴力と性的暴力とが、シオニストの入植者植民地主義プロジェクトの織り成す多面的な方法を示しています。このプロジェクトは、女性と女児を見境なく殺害し、彼女たちの生きるチャンスと生活を奪うだけでなく、パレスチナ人の男性性を性的虐待と拷問の標的としています。入植者植民地主義と植民地主義フェミニストが、虐殺を可能にする言葉と行為のなかに私たちの緩慢な死を書き込んでいますが、そうした言動が鳴り響いているのを黙らせるために、私たちはあなたがたに協力を呼びかけます。

 

原文:https://palestinianfeministcollective.org/shut-down-colonial-feminism-2023/