『障子のある家』へー尾形亀之助の詩について115ー
原の端の路
夕陽がさして
空が低く降りてゐた
枯草の原つぱに子供の群がゐた
その中に一人鬼がゐる
好きな詩だ。「子供の群れ」を「原っぱに」配置することが、一見するとメルヘン的世界を予想もさせるが、最初の二行からして不穏を漂わせる。それにしても詩人は、夕暮れの時刻、黄昏の時刻、闇が舞い降りる直前の、すべての存在がおぼろになりかかるこの時間帯が、何よりも好きなようだ。「空が低く降り」るというのは、闇の訪れとともに空と地の境界が曖昧になってきているということだろうか。
そんな時刻に、詩人は「原の端の路」に立って、遠くの風景を見ている。遠くで戯れている「
子供」たちを、穏やかにしてくれる無垢な子供たちをぼんやり見ている。ところが、「見てゐると――」、見続けていると、一瞬どきりとさせられる。いるはずのない鬼がいつの間にかそこに混じっているからだ。現実が詩人の中で「鬼」を幻視させてしまう。平安の中に知らず知らず入り込む不穏・不気味。
最初の予告といい、最後の行の決定打といい、シンプルなゆえに素敵なシュールレアリスム詩だ。