この五月  | ヤドリギ金子のブログ

この五月 

みずたのまんなかに摩耗の桜を泥の浮き船のように残し
深くなる一方の夜
熱い悔恨のような星くずが降りそそぎ
塔のように立ち上がり凝結した
宇宙塵は
深い森の清流の岩陰を走る魚のように
私を貫いて過ぎ
しだいに影絵のように小さくなり
ついには見えなくなったが
手に星形が刻印され
雷鳴に打たれた樹木の戦慄のように残った
だから、
蛙たちがみずたに低く低く沈みかかりながら
懸命に月に向かって泣き続けもした夜が明けて
広がる緑から溢れてきたのは
すべてをうつろにするばかりの陽光だった
その陽光を無為に受けるように
五月のツバメは
水面すれすれに滑空し
臆面もなくこの国の不穏に靡いてしまって
またも祭に群がろうとしている私の喉元を
切開した