ブログにもたびたび綴っている記憶がありますが、色々な経験や興味の点と点が、パーっと一つの線になって繋がってくる瞬間というのが時々あって
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大の卒業式でのスピーチで、一番心に残っているポイントでもあります。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
全文はこちらから(日経新聞)
私はあいにくジョブズとは違って(笑)、まだ何も実を結んではいないのですが、それでもいろいろなことが繋がってくる感覚があった時はゾクっと興奮します
最近のゾクっと体験は、この舛添さんのイスラエル情勢の記事。
この記事の中に出てくるテオドール・ヘルツル(イスラエル建国の父)を記念した階段がウィーンの中心地にあるんです。
昔、義父がこの近くにアパートを持っていて、しょっちゅう通っていた場所。
なのに無知な私は全くなんの興味も示していなくて、イスラエル建国のきっかけとなった人物がウィーンに住んでいたことすら知らなかった!
素晴らしく有能で、人柄もとにかく素晴らしいガイドの幸子さんから、この階段のことや、ヘルツルがウィーンで暮らして、今のDie Presse(新聞)の記者だった話も聞いていたのですが、それでも「ふーん」くらいの感じだった私。
でも舛添さんの記事を読んで、イスラエルの建国が、スイスのバーゼル(義姉が住んでいる)とも関わりが深いことを知って、またハッとして。
どこか他人事だった遠い国の話が、急に身近な現実味を帯びてきたというか。
そして、先日もブログに書いたこの新作オペレッタ。
ここで、ナチスドイツとの併合当時のオーストリア首相だったシュシュニックの辞任前の最後のスピーチが流れるんです。
シュシュニックもナチスドイツに捉えられて、当時、ナチスドイツが接収してゲシュタポ(秘密警察)の本部として使用していた高級ホテル・メトロポールに収容されます。
ホテル自体はもう取り壊されていて存在しないのですが、跡地には記念碑が立っています。
そして、ホテル・メトロポールの模型は、ウィーン・ミュージアムに展示されています。
ここはゲシュタポが政治犯などを尋問したり拷問するのに使われていたホテルで、幸子さんから「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」という映画の舞台にもなっていると教えてもらっていました。
ちなみにこの邦題はひどいです。
この映画は、シュテファン・ツヴァイクの小説『Schachnovelle』(チェスの話)が原作。
『チェスの話』では観客を動員できないと考えたのはわかりますが、「仕掛けた」はかなり違うんじゃないかなって、ちょっと憤っております。
それはさておき、私は原作ももちろん読んでおらず、映画もどうしようかな、ヘビーすぎないかなと、見るのをちょっと躊躇していました。
でも、ツヴァイクとヘルツル(上記のイスラエル建国の父)は知り合いで、ヘルツルはツヴァイクの編集者としての関わりもあったんです。
ヘルツル、ツヴァイクといった点々とした興味、そしてオペレッタとシュシュニック、ホテル・メトロポールと、点でしか認識していなかった事柄が繋がってきている感覚もあったので、やっぱり観てみようかと思って。
意を決して、先週末に見てみました。
そうしたらまぁ、これが素晴らしい作品で
とにかく、映画としての完成度が高くて洗練されている。
恐れていたほどの残虐なシーンは無く(少しはありますが耐えられるレベル)、主人公の精神世界に重きを置いた作りです。
舞踏会を楽しみ、文学を愛する豊かな文化人だった主人公の境遇が一変した時、彼の心を支えたものは一体なんだったのか。
精神の自由とは何か。
難しいテーマを見事に映像化していて、あまりに感心して衝撃を受けたので、原作も英語とドイツ語で買ってみた(←邦訳は電子書籍化されてなかった)。
そうしたら、原作と映画も少し違って、私が衝撃を受けた箇所は映画独自の演出だったみたいです。
私は映画を見終わってから知ったのですが、これを知ってから映画を見たら、作品理解がより深まったなと思ったポイントがあったんです。
少しネタバレな情報かもしれませんが、私は知ってから見たかったなと思った情報なので、「少しネタバレでも構わないよ」という方は見てください。
見たくない方は、薄目で高速スクロールで!
注
以下、ネタバレかも?な情報(1行です)↓↓↓
ここからネタバレ
ゲシュタポの将校役とチェスの世界チャンピオン役が一人二役(同じ役者さん)
ネタバレ終わり
私はこの情報を知らずに観たので、えー、そうだったのか! なるほど!って、知ってから作品理解がより深まりました。
そして、この映画でもシュシュニックの演説が流れて、いかにこのことがオーストリアの歴史に残る日(ユダヤ人の明暗がガラリと変わる転換期)だったのかと、さらに深く心に刻まれました。
映画は有料ですが、さまざまな配信プラットフォームで観られます(海外からでも日本語字幕付きで観られます)。
こんな素晴らしい作品を紹介してくれた幸子さんに感謝
国家公認ガイドの幸子さんのインスタ
https://www.instagram.com/sachikokubokunesch
ちょうど私の修論のテーマとも様々な事柄がリンクしていて、点と点が繋がっていくようなゾクゾクする体験でした