先日、まーったくなんの予備知識もなく、ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司さん主演の「パーフェクト・デイズ」を見に行ってきました。



場所はおしゃれエリア、Spittelberg(シュピッテルベルグ)のアート系映画館Filmhaus。


昔からありますが、ちょっとおしゃれになってる気もするけど、変わらない雰囲気!


前評判が良いのか、映画館前もすごい人。


全く何も知らずに見始めたので、最初、役所広司さんのアパートが映り、古い自販機が映り、車のオーディオがカセットテープだった時点で、「あれ? これ、昔の日本の話?」って思ったのですが、すぐにスカイツリーが映って、「あ、現代か」って。


次々に個性的で現代的な公衆トイレが映るので、「これって監督が来日して、日本のトイレが面白いと思って、着想した映画なのかな」とも思って。


でも観終わって調べてみたら、そもそも日本財団の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトっていうのがあって、その活動の一環として、プロジェクト主導でこの映画が制作されたことがわかりました。


淡々としたトイレ清掃員(役所広司さん)のささやかな日常を描きながらも、彼の過去や未来を想像させるような描写もあって、ほとんど同じ日々の繰り返しなのに、全く飽きずに映画を観終えることができました。


こういう映画って、時々作り手側の自意識が鼻につきすぎちゃって、「はいはい、アートをやりたいのね」って、スーッと冷めてしまったり、飽きてしまうこともありますが、この映画は、やはり映像の力とストーリーの力、編集の力、音楽の力、そして何より役所広司さんの力で、最後まで観客を惹きつけられるのがすごい!


役所広司さんありきの映画というか、主演が役所広司さんじゃなかったら、ここまでリアリティを持たせて観客を惹きつけるのが難しかったんじゃないかなぁって思いました。


そして終盤にちらっと出てくる三浦友和さん!


私は今まで三浦友和さんのことを、百恵ちゃんの夫としか認識しておらず、昔のイケメントレンディ俳優だと思っていたんですが、演技がお上手なんですね!


役所広司さんとお二人で、普通に考えたらあまりリアリティのないように思える寸劇が行われるのですが、これに不思議なリアリティがあって!


他の役者さん同士だったら、恥ずかしくて見ていられないようなシーンになりそうなのに、とにかく2人とも上手くて、脚本がちょっとくらい無茶でも心に残るシーンになるんです。


ところどころ、リアリティに欠ける部分もあって、いかにも「ザ・邦画!」って感じの、見てる方が気恥ずかしくなる演技のキャストもいるのですが、このお二人のうまさが群を抜いて素晴らしくて、映画に深みとリアリティを与えてるなって思いました。


あと、不思議な存在感を放っている写真屋さんの店主が、翻訳家の柴田元幸さんであったこともびっくり!


これもいい味が出てるんですよね。


洋楽や翻訳小説を愛好する平山(役所広司)ともリンクするようで、配役にも不思議な深みを感じました。


全編を通して日本語で、日本の風景を大スクリーンで見られるのも、海外在住者には嬉しいポイント飛び出すハート


日本人じゃないとわからないような小技(スナックのママ役が石川さゆりさんだったり、研ナオコさんが神社の境内で猫を撫でてたり泣き笑い)も楽しめます。


「そうだよね。みんな色々あって、それでもささやかな日常を慈しみながら生きていくんだよね」って、思わせてくれる映画。


ヴェンダース監督らしさも散りばめられていて、昔、ヴェンダース映画を見ていた人なら、懐かしさも感じると思います。


純粋な日本らしさと、外国から見た日本らしさが混ざり合っているのも不思議な感覚。


私は、映画を見て日本食(コンビニとか居酒屋のB級グルメ)が恋しくなりました(笑)


ウィーンでもまだ上映していますので、ご興味のある方はぜひ!