昨日、学校から帰ってきた下の子が息急き切って、「ママ、話がある! 全部話終われるかな!」(午後にまた授業があるから学校に戻るので)って、興奮している。
その話を要約すると、
1. 友達のロッカーが開いていた。
2. 閉めてあげようとして中を見たら、見慣れないお財布が目に入った。
3. 「おや?」と思って、友達数人でロッカーの中を見たら、たくさんのお財布が入った紙袋があった。
4. 中にはその時に一緒にいた友達の学生証やお財布もあった。
5. 先生に報告した。
という流れ。
実は、下の子の学年(日本の小5。こちらでは中学2年生)では盗難が相次いでいて、ロッカーの鍵を番号錠じゃなく、鍵🔑で開け閉めするタイプに変えるように通達があった。
そして、校長先生からも「警察を呼ぶ」という通達もありました。
下の子も一度お財布の中からお金だけが盗まれたり、先週金曜日にも体育の授業で更衣室に置いてあったカバンからお財布が盗まれたばかり。
この金曜日に、下の子だけでなく、他にも何件かの盗難がありました。
で、うっすら、この子が怪しいんじゃないかという噂もあったのですが、私も夫もそんなことを言うもんじゃないと下の子を嗜めていて。
私はイギリス留学時代に、大学院生専用のアパートを5人でシェアしていたのですが、私を含めた3人はみんな大学院生で落ち着いていて良好な関係。
でも2室は常に入れ替わり立ち替わり、学部生が入ったりもしていて。
で、どこかで問題があった子が、たらいまわしになって送られてくる感じだったみたいで、イギリス人の学部生が入ってきたら、この子が本当に問題児で!
いつも遊びまくってるし、常に精神不安定な感じ?
で、ある時、私のことを急に泥棒だと言って、この子のタバコ(忘れもしないマルボロゴールド)を盗んだと言い出したんです!
私はとにかくショックだったんですが、他の2人が激しく私のために戦ってくれて、私も自分の日本から持ってきていたタバコ(←背伸びして、好きでもないのにファッション感覚で吸っていた黒歴史(笑))を見せて、
「私は日本のメンソールしか吸わないし、たくさん持って来ている! あなたのマルボロなんて盗んでまで吸うわけない!」
って言って、事なきを得ました。
でもその時に、一度疑いをかけられると、「やっていない」事の証明ってほとんど不可能に近いんだなって、身に染みて実感して。
私の場合はフラットメイトがみんな私の味方だったから事なきを得たけど、もしみんなが私を煙たく思っていたら、やってもないことをやったと烙印を押されても不思議じゃない。
大袈裟ですが、大衆のミスリードや悪意の力ってホロコーストへも繋がる道で、マジョリティがマイノリティに下すパワーって、決して侮ってはいけないと常々思っています。
なので、下の子にも、確証がないことを言いふらしてはダメだと言い含めていました。
そして、この子が実は、下の子が小学生の時から仲良くしていたお友達で……。
下の子の小学校は女子が極端に少なく、クラスで4人しかいない時期も長くて、他の2人(オーストリア人)はちょっとヤンチャで。
下の子ともう1人の子は、同じ移民同士と言うこともあるのか気が合って、ずっと仲良くしていました。
でも、前にも何度か書きましたが、お家の方針が違ったり(家の行き来や誕生日パーティーに参加しちゃダメ)、ちょっとした嘘をつかれて、なかなか本当のことがわからなかったり(遊ぶ約束が正しく成立しない=いつもすっぽかされる)、連絡手段がなかったりもして(親御さんが学校に来ないので、連絡先の交換もできない)、お付き合いはなかなか難しく
親としては、他の子と仲良くなってくれないかなとは、ずっと思っていました。
そしてギムナジウムに入って新しい友達ができた下の子は、この友達の圧が辛くなってきて、徐々に離れようとしていて。
(この子も同じギムナジウムに進学しました)
ここにチラッと書いてます
で、最近は時々この子の話も聞きましたが、この子も別に友達ができて、前ほど一緒に行動することもなくなっていました。
でも下の子からは、この子がすごくお金を持っている、みんなに奢ったり、お金ちょうだいと言って来た子にあげている、っていう話を聞いていて。
この子のママは専業主婦で、パパはピザスタンドを開いていたのを畳んで、今はタクシーの運転手をしていると聞いています。
経済的に、そこまで裕福ではないんだろうなというのは、今までもなんとなく感じていて。
小学校の時は、みんながタブレットやスイッチで遊んでいるのを見て、「私もたくさん持ってるけど壊れちゃった」と言っていたり、休暇はアフリカのリゾートに行くと言っていたけど、どうやらそれも本当じゃなさそうで、彼女の複雑な胸の内を察したり……。
今の子供たちが通っているギムナジウムは公立ですが、まわりに異様に裕福な子が多くて、私もいつもビックリしています。
世間的に見たら普通の収入であろう私たちも、周りの子たちの裕福さ、贅沢さ、金銭感覚の違いにびっくりすることが多々あって。
上の子も下の子も、仲良しの子たちが持ってるものが欲しくてねだってくるのですが、それがいちいち私にはびっくりするような、子供には高価すぎると思うものばかりで。
それでもまあ仕方ないと、私や夫は他をやりくりして買い与えたりもするわけですが、それができなかったらやっぱりちょっと惨めな気持ちにはなりますよね……。
みんなが語るキラキラしたリゾートの話、イタリアやギリシャに持っている別荘の話、ブランドの服や靴、最新のデバイス、高級化粧品、大きくて豪華な自宅、ご両親の華々しい職業やご活躍……。
私や夫も、話を聞くたびに「ほえ〜」となるし、贅沢だなぁと思うし、ちょっとした劣等感を感じたりもします。
ましてや、経済的な理由ではないとは思いますが、スマホも与えられず親とシェアしている、そのお友達はどんな気分で過ごしていたんだろうか。
携帯がないから友達とのグループチャットも入れず、子供たちも残酷なので、なんとなくこの子の(家庭の)異質さに勘づいて、どことなく見下すような雰囲気もあったんじゃないかな……。
だから、お金を手にして、みんなに奢ったり、ちょうだいと言った子にあげるようなことをして、バランスを取ろうとしてたんじゃないのかな……。
その盗難が見つかり、先生と話したその子は、自分からクラスのみんなの前で話したいと言ったそうなんです。
その鋼のメンタルにもビックリしました。
その子は、一回出来心でお財布を盗ったらクセになってしまって、中毒(Sucht)になってしまったと、みんなの前で話したそうです。
もう私はその話を聞いて、涙腺が崩壊。
その子が可哀想すぎて、胸が痛んで……。
明日からどうやって学校に通うんだろう。
親はどう思っただろう。
学校では皆が被害額を書いて提出したらしいのですが、親御さんが弁償することになるんでしょうか。
警察に届けられちゃうのかな。
この年齢(彼女は小学校入学を一年遅らせているので、下の子たちより1歳上ですが、それでも12〜3歳)で、常習的に盗んでしまうのって、悪質と言うより、精神的な問題の色合いが濃いですよね。
うちの子たちが同じことをしていたら、やはり精神的な問題に違いないって思います。
下の子や友達は、この子のことを怒っていたので、「ビッグニュース」くらいのテンションでの報告だったんですが、私が泣き出したので、ビックリしたみたい。
夕食の席でこの話になった時も、どうしても涙を堪えきれなくて。
小さい時から知っている子で、頭が良くてコミュ力も高い子だって知っているだけに、なんでこうなっちゃったんだろうって、自分でもびっくりするくらいショックを受けてしまいました。
イスラム系移民として、ご両親も良かれと思っての家庭方針が、こちらの社会と合わずに、子供が思春期になってこうした問題になってしまった一面もあるのかなと思うと、余計にやりきれません。
またゆっくり別に書きたいと思いますが、オーストリア社会のアルコールへの意識の緩さも、私には驚くことの連続で。
上の子がもうすぐ飲酒可能な年齢(16歳)になるんですが、上の子はこちらの学校システムだと早生まれなので、周りの同級生の多くはもう飲酒が可能。
先輩ママ友から「飲み会が始まるよ」って聞いてはいましたが、16歳で大っぴらに飲酒ってどうなの?と思う、昭和な私。
学校行事で泥酔したり、吐いたり、大変な騒ぎになったりもしていて、上の子のお友達の中で唯一のイスラム系の子が、毎回お酒のトラブルを起こすんです。
彼女はもちろん宗教的に飲酒NGで、お父さんにバレたら殺されると言いながら、毎回泥酔し、吐き、具合が悪くなり、自分には生きる価値が無いと泣き崩れ、介抱が大変みたい……。
特に宗教的な理由がない私でも、16歳で学校行事で飲酒を許す先生ってどうなの?って思うのに(ちなみに学校には内緒にするように言われてたみたいですが)、イスラム系のご家庭には耐えられない堕落社会に思えるんじゃないでしょうか
(でも、こんなの日本ではヤンキーとかがやることで、普通の学校ではあり得ないとオーストリア人ママに言ったら、「あら、オーストリアでは、エリートほどみんな遊ぶのよ。私立の名門なんてもっとすごいよ」と言われた ほんとかな
)
そんな自分たちの価値観と周りの価値観が違う環境で子育てをするフラストレーションとか、そうやって育てられる子供とまわりの環境との歪みって、私にも他人事ではありません。
その子が心穏やかにまた学校に通えるように(もしくは転校するにしても、転校先でうまく溶け込めるように)、なんとかうまく収まりますようにと、祈る気持ちです