アメリカ映画やインド映画というのは多くが
映画館で食べるライトミールのような手軽さはあります。
さっぱりとした、それでいてまた食べたくなるような。
コーラなんかとよく合いますよね。
それに比べればヨーロッパ映画ってのは結構重々しい感じがします。
料理でいうならばこってりしたソースのかかった固いステーキ。
美味しいけれど、時には疲れる感じがします。
それでもハマればワインなんかと一緒に食べて至福の一時を演出してくれるものです。
今日はそんな映画をおひとつ。

【タイトル】海を飛ぶ夢 (Mar adentro 2004 西)
【キャスト】監督:アレハンドロ・アメナバール
ハビエル・バルデム(ペドロ)
ベレン・エルダ(フリア)
ロラ・ドゥエニャス(ロサ)
【ストーリー】スペインのラコルーニャに暮らすペドロは若いときに四肢麻痺となり寝たきりの生活をおくっていた。そんな彼の願いはただ一つ自ら死を自らの意志で決定するという、いわば「尊厳死」であった。ところが、スペインの法律では尊厳死は認められていない。
そこでペドロは尊厳死の権利を合法的に獲得するため弁護士のフリアとともに活動を開始する。そのフリアも不治の病におかされ徐々に死にゆく身体であった。ペドロとフリアは活動を通し生活を共にすることで徐々に心を通わせてゆく。
ある時、ペドロがテレビで尊厳死を訴えている番組を見て彼の考えに関心を持ったシングルマザーのロサはペドロに会いに行く。ペドロの考えを理解しながらも「生きてほしい」と言うロサもまたペドロに惹かれていくのであった。
なかなか進まない活動にペドロは自分で書き溜めた詩を出版することで世論に訴える作戦に出ることにし、その手続きをフリアに託す。そして、出版された本をフリアが持ち帰ることが出来たなら、二人で生きていこうと誓いフリアはマドリッドへ出発するのだが…。
【みどころ】テーマ自体は重いですが、それでも観せてしまうのはいい映画の証拠でしょう。BGMも淡々としていて、全体的には単調な感じがしますが、役者がみんな上手いのでそれがかえっていい効果となっています。ペドロ、フリア、ロサを軸になるものの、それ以外の登場人物(ペドロの家族など)もいい感じで話にからんできます。
ペドロを演じるハビエル・バルデムは決してカッコイイという感じで無くとも魅力的な男性を演じています。有名なところでは『ノーカントリー』なんかにも出演していて華々しいという感じではなくともキラリと光る俳優です。もっといろいろ出てもよさそうなものです。フリアを演じるベレン・エルダは出演作多数の演技派女優ですね。『永遠の子供たち』などで有名です。僕はどちらかというとこの作品での彼女の方が好きです。なんとなく中年女性の魅力とでもいうのでしょうか、少し影のある役をさせたら一級品です。美人すぎない美人ってとこがイイ!
ストーリー展開も観る者を飽きさせないテンポのよさがあります。ただ、どちらにせよ悲しい(観る人によっては納得できない)ラストかもしれません。ヨーロッパ映画らしくて僕は好きな感じですけど。
監督のアレハンドロ・アメナバールは『アザーズ』『オープン・ユア・アイズ』(アメリカで『バニラ・スカイ』としてリメイク)のような緊張感のある映像を得意とする監督です。随所に「らしさ」は見えます。美しい映像(この監督はよく幻想的なシーンを入れます)よりも人間を撮るのが上手いと感じさせてくれます。これからの作品に期待する監督の一人です。
【総評】調べていたらこの作品はアカデミー賞の外国語映画賞をもらってますね。だいたい外国語映画賞はクオリティーとしてバランスはいいし秀作が多いです。この作品も僕は文句なしに傑作といえるでしょう。それぐらいの奥深さは充分あります。分析的に観ても、映画を楽しむという点においても多くの人を満足させるに足るものだといえます。
社会的倫理と個人の尊厳というのは難しい問題ですね。けど、この作品は説教臭くないところが映画としての独立性、芸術性を保っています。日本やアメリカでは社会的なものも含めてこの映画はなかなか作れないと思います。そう考えるとスペイン社会というのは絶妙な設定でしょう。
ただ、さまざまなことを考えさせられることは確かです。観て爽快感を得るとかというタイプではないですね。観るときはシチュエーションを考えた方がよさそうです。けれども是非観て欲しいと思える一本ですね。

【評価】☆☆☆☆★ 4.5
僕好みの映画です。ラストは少し悲しいですけどね。
ただ、作品にのめり込むというタイプではなく、ある男の生き方という感じがします。
映画としては上質なものですしテーマに少しでも興味が持てるなら観ることをお勧めできる映画です。