現役でもない爺が外野席からつぶやいても声は届かないだろうし、まあ届いたとしても屁の突っ張りにもならないと思うが、良い介護をしようと日々懸命に考えて仕事しているリーダーや職員に「頑張れ」と声援を送りたくなる今日このごろである。
8月も残り僅か、次第に消費増税が実施される10月に近づいて来る。政府が参議院選挙前に消費増税へ舵を切ったことで8万円加算は10月より実施されることになったが・・。
8月9日に介護労働保険センターが発表した介護労働実態調査を見ると、20歳未満0.4%、20歳~25歳未満3.4%、25歳~30歳未満5.8%と30歳までの若い世代の介護者が全体の9.6%に留まっている。介護現場には30歳までの介護職員は10人に一人も満たず、一方60歳以上の介護職員は21.6%と10人に二人は60歳を超えているこの実態を見ると若い世代の介護人材が枯渇していることをしみじみと実感せざるを得ない。
第一次産業の深刻さは別格としても弟三次産業で30歳未満の年齢層が10人に一人も満たない業種は他にあるのだろうか。国は2017年12月閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」(この政策で8万円加算が発表された)の序文で以下のように述べている。
『人づくり革命を断行し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと改革し、子育て、 介護などの現役世代の不安を解消し、希望出生率 1.8、介護離職ゼロの実現を目指す。
生産性革命を実現し、人工知能、ロボット、IoTなど、生産性を劇的に押し 上げるイノベーションを実現していく。人手不足に悩む中小・小規模事業者も含め、企業による設備や人材への投資を力強く促進する。あらゆる施策を総動員し、力強い賃金アップと投資を後押しすることで、デフレ脱却を確実なものとし、名目GDP600 兆円の実現を目指す。
成長し富を生み出し、それが国民に広く均霑(きんてん)され、多くの人たちがその成長を享受できるという成長と分配の好循環を確立し、力強く成長していく。』
言葉は立派だが中身はスカスカで現実と余りにかけ離れている。「小規模事業者も含め・・・・力強い賃金アップと投資を後押しすることでデフレ脱却を確実なものとし・・成長と分配の好循環を確立する・・」この言葉は「30歳までの若い介護者が10人に一人しか存在しない介護現場の現実」を意に介さない官僚が書いた作文にしか思えない。第一に消費増税をしてデフレ脱却ができる訳がないだろうし、介護に生産性を持ちこむことをしない為に、利用者一人一人の生活の歴史を大切にして個別性を重視した介護をする為に小規模を求めた多くの人たちの意見を顧みず高齢者自身の意見を聞くこともなく利用者や家族へ自助を押しつける内容に過ぎない。
2015年(平成27年)第5次介護報酬改定は小規模事業者にとって最悪の改定になった。従来と全く同じ介護サービスを提供しても9%から10%収入を削られ一年の内1カ月分の介護報酬が丸ごとカットされた。国は「小規模の介護事業所(特にデイサービス)は潰れてよい」と切り捨て、効率化と利益の囲い込みを求める大企業優先の介護政策へ転換した。あれから4年経過しワムネットの統計では地域密着デイの半数は赤字である。介護に資本格差を拡大させ小規模だからこそ出来る利用者の個別性を重視する介護サービスや介護の質が無視される介護保険へ変容した。
10月からの新処遇加算は地域密着型の小規模の通所介護の加算率は1.2%で、例を挙げれば月300万の収入であれば加算金額は3万6千円分しかない。(小規模多機能の加算率は1.5%で4万5千円)10年以上の経験ある介護福祉士がいても一人分の8万円にも満たない。ただ小規模事業所が救われるのは少ない金額ではあるが職員全員へ均一な分配が可能になる。不幸中の幸いと言うか貧しくても小さなおにぎりを等しく分け合って食べる公平さが選択出来る。
8万円の新処遇加算は消費増税とセットで施策されており大切なものが見えなくなるよう馬の鼻先に人参をぶら下げ視野狭窄に陥るよう誘導がなされている。在宅介護には絶対欠かせない介護支援専門員、訪問看護、福祉用具事業所は処遇加算の対象外とされ、10年の介護経験者Aグループ、それ以外のBグループ、介護職以外の生活相談員、セラピスト、看護師、事務員、運転手等のCグループに分けて2:1:0.5の配分を義務付けている。最初から事業所間で、介護職員間で、各職種間で財布の中身が気になりお互いが疑心暗鬼に陥る分断が仕込まれている。さらに消費増税分で補われるという建前と宿命を持った加算であり、且つ加算額(お金)を分配する裁量を経営者に持たせているので労務コントロールに利用されやすい性格を持つ加算である。
国は介護報酬改定をするたびに「基本給を削減して諸手当により削減分をカバーする手法」を取って来た。しかも社会保障としての全体の介護費用は削減し続づけて来た。諸手当は加算であり加算が算定出来ない事業所は生きては行けないシステムに変容している。報酬改定があるたびに事業所は加算を算定できるかどうか一喜一憂せざるを得ないし、加算をとるために恣意的な人事も優先せざるを得ない事業所もあるだろう。
9月になれば各地で介護の兼任職が増えるかも知れない。看護職兼介護職、相談員兼介護職、事務職兼介護職、ケアマネ兼介護職・・○○職兼任介護職・・・・・新処遇加算は極論すればそういう加算である。介護に係わる全世代、全職種の処遇改善がされなければ社会的な地位の向上や若い介護職も増えないだろうし、加算の陰で行われて来た介護報酬(基本給)の削減にこそ焦点を当て大幅な介護報酬の改善を求めることが大切な課題なのです。
社長もリーダー達もそういう内容を理解した上で新処遇加算の対応を検討しているように思う。大企業との体力格差にどう対抗して行くのか、良い介護サービスを提供できる研鑽をどう継続するのかを考えながら、先を見据えて生き延びる道を模索している背中に伝えたい。「頑張れ」