「NHKスペシャル 物価解剖 食糧品と値上げの正体」(渡辺努・河野龍太郎)をみました。
・・・日本が世界に追いついた。
コロナショック、ロシアvsウクライナ戦争、US・イスラエルvsイラン戦争。
平和の時代だった。グローバリゼーションが進み、コストの低い土地で生産する。
突然の停止。そして逆転。サプライ・チェーンの安全保障を重視し、国内回帰。
日本では、資源・食糧輸入、価格上昇、貿易赤字、円安が、さらにインフレをよぶ。
・・・しかし他面、市場経済がダイナミズムを回復する。
価格調整の柔軟性を得た。企業間競争、新商品、高付加価値の追求、需要の開拓。
インフレ予想の水準が明らかに高まる。
同時に、賃金をもっと上げるべきだ、という要求が強まる。
これまでデフレで賃金は下がってきた。深刻な社会・政治問題の焦点がシフト。
デフレに苦しむ時期からインフレに。一つの解決?
しかし、「好循環」というより「負のスパイラル」(物価高、賃上げ、物価高)。
・・・消費者の行動も変わる。
価格が上昇しても同じ商品を買う。インフレを受容する。
節約志向。スイーツの高価格帯が伸びる。並行して強まる。ご褒美型消費。
価格帯が変化する中で、コンビニやスーパーは消費者の価値観を読むことに集中。
格差の時代。所得、資産、消費の大きなばらつきが生じている。
スーパーは、価格帯をひろげて充実させる。
低価格のプライベートブランド商品を増やす。
低価格帯のポテトチップスは、国産からアメリカ産のじゃがいもに転換。
コロナの強制貯蓄、そのリベンジ消費という時期があった。
そのあと、消費の量も単価も下げる、という修正が起きた。
・・・あるいは、停滞する賃金の制約下で、値上げへの耐性が下がる。
家計簿の勉強会。セール日をねらう。家計簿をよくみる。
欲望をコントロール。娯楽の選び直し。
高齢者は先が見えない。不安は生活費の抑制に向かう。
低所得層の購入する多くの商品でインフレが進む。その人たちへの打撃が大きい。
働き方、世代、家族構成によって物価高にも差がある。
就職氷河期世代は取り残される。修正がきかない社会。
格差拡大の社会的コストが現れる。
・・・政府の物価高対策。
ガソリン税撤廃。給付付き税額控除(逆進性への対策)。年金給付額引き上げ・・・
もっとも重要な対策は持続的な賃上げの実現。
インフレが起きても実質賃金を上げる。春闘にインフレを組み込む。
株主利益最大化、コーポレートガバナンス改革。その政治文化を正す必要がある。
企業の利益を、労働者・社会に還元する。
政府は実質賃金の長期見通しを宣言する。
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政治的な分断と大国支配、現代のインフレの背後にある地政学的ショック。
多次元で多層的なインフレの波及、相互作用が、インフレ予想を形成し、消費の抑制にもつながる。スタグフレーションのリスク。
それを緩和し、免れるのは、株価上昇とイノベーションを加速するアメリカ。富裕層の消費意欲は衰えない。
あるいは、価格変動に対して強靭な、「レジリエンス(回復力)」の高い経済構造、それを戦略的に推進する構造転換支援の政策。そして、地域統合や安定した政治・経済秩序を共有する国際連携、諸国家を動かす連帯社会。
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今、株価高騰と庶民の生活には大きな隔たりがあります。
アメリカ経済の好調さはヨーロッパや日本の経済的失敗を表しているのか?
グローバルな国際収支不均衡が再現しています。各国が不均衡を調整できないまま、国際資本移動によって増幅される世界。次の金融危機を避けるには金融規制と、市場の柔軟性を支える制度改革が必要です。
物価高の社会・政治問題を解剖し、理解すること。それは異なる対策と制度に議論を導くでしょう。その目標は、民主的な社会です。
経済的繁栄を共有し、平和を維持する。内外の対立・紛争解決を促すメカニズム。地域の協力と市場統合から、世界政治の誕生へ。 ⇒ IPEの果樹園 今週のReview 5/11/2026