2025年を回顧するとき、世界秩序が暗転した、と感じます。そのような感覚は、ウクライナで続く戦争や、日本各地の地震、大火災が示した人間社会のもろさ、あるいは、病気に苦しむ高齢者の生活苦、ささやかなぜいたくや楽しみを物価高で失う無力感から生じます。
野蛮な行為や嵐によって住処を失うことに、文明は対抗してきました。個々の人間の不幸は、社会として緩和できます。民主主義が正当な秩序の感覚を国民に問う限り、人としての尊厳を維持する仕組みは、政府が用意するものと思います。
生物としての能力に大きな差がなくても、私たちの人生は、生まれた地域や家族によって大きく異なります。それは、インフラ整備、公共政策の違い、行政府の能力、民間部門の生産的投資、家族や学校による教育が、能力を高めるからでしょう。それらの組み合わせは、富と分配の在り方を決める多様な仕組みを介して、調整されてきました。
「それが市場メカニズムであり、グローバルな市場統合は常に正しい。政府はしばしば非効率で腐敗しており、政治家たちが権力闘争によって市場を歪めている。」
そういう考え方は、ナショナリズムに対してグローバリズムと言えますが、今、豊かな諸国で大きく信用を失いました。グローバリゼーションの過程が社会を変え、安定した職場の解体、労働条件の不安定化、金融資産の膨張を経て、貧富の格差を拡大したからです。
たとえば、所得や富の偏った分配について、ペンズ・パレード*が提示するイメージは衝撃的です。世界人口を所得の低い者から高い者に並べて、人の大きさで所得を示し、1時間で行進させます。
世界人口の平均所得(約1万3000ドル)の人の身長を標準的な166センチとすれば、もっとも裕福な者の一人、イーロン・マスク(テスラの2018年報酬プランで560億ドル)の身長は700万メートルを超え、エベレストの800倍に近い超巨大人となります。
1時間続くパレードの最初は見えないほど小さな人々であり、中位の人(身長約38センチ)が30分に通り、45分を過ぎてようやく166センチの人が現れます。59分を過ぎて巨人たちが現れ、マスクの頭は真っ暗な宇宙の中にあり、膝の高さでも大気圏外の人工衛星と同じ水準です。
極端な格差は社会の一体感を失わせ、超富裕層の政治的影響力を歯止めのきかないものにするでしょう。歴史が示す世界各地のガバナンス(統治形態)の多様さに、解決の道を探すときです。仲間とともに、社会として問題を共有し、困難から脱け出す道を見いだすからこそ、一人一人の輝きは増すと思います。
グローバリゼーションの見直しが進む年になるでしょう。
政治的(軍事的)に分割された世界ですが、秩序を破壊する力と、新しい秩序を築く力とがぶつかり合って、グローバルな秩序は必ず誕生します。その文明の水準、知識とさまざまなインフラを正しく生かすことができれば、人類のすべてが平和に、満足できる水準の食事や住宅、教育、医療を享受できると思います。
この暗い世界政治と金融市場の力に抗して、職場に向かう大人たちが協力する勇気を持つことで、子どもたちの夢をかなえる社会に至るのです。
(注)
*ペンズ・パレードは、オランダの経済学者ヤン・ペン(Jan Pen)が1971年の著書 Income Distribution(所得分配)で提案しました。
(参照)
"Pen’s Parade: The Stratospheric Heights of Inequality" by Jonathan Beynon, February 10, 2025
CDG ( Center for Global Development ) のBLOG POST
https://www.cgdev.org/blog/pens-parade-stratospheric-heights-inequality