FPの記事で、Stephen Waltが無人島に行くなら持っていきたい本(だったと思います)を推薦していました。その1冊が、James Scott, Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed)でした。早速、注文して入手したものの、本棚で読まれるのを待っています。

 

NHKスペシャル「ヒューマンエイジ 人間の時代 第3集・食の欲望 80億人の未来は」を観て、思い出しました。

 

この話は、Foodieの人たちから始まります。たっぷりの富と時間を得た人たち(起業家や不動産会社の経営者)が、「食べる欲望」を満たすために地球上を飛び回り、豪華で希少な、自然素材を吟味した美食コースを味わいます。

 

他方で、80億人を超えた人類の食を支えるために、全陸地の40%が耕地に変わった、と番組は指摘します。そこに広まるのは「食の単一化」です。それはスコットのテーマでした。大規模な合理化・計画化を「解決策」とする超近代主義です。

 

ブラジルの科学的に管理された巨大工場が24時間体制で生産し続けているのは、透明の液体(異性化液糖)と、真っ白な粉末(加工デンプン)です。ケーキや清涼飲料、チップス、麺類がとても美味しいのは、これらのおかげです。

 

人間の食べ物は、伝統的な多様性、地域や文化の豊富さを捨てて、ますます、たった2つの穀物、トウモロコシと大豆に依存するシステムに変わりました。飼育される肉牛も、養殖されるサーモンも、これらを使った加工飼料を食べています。

 

不毛の赤い土地であったブラジルのセラードが、土壌改良で地力を高め、トウモロコシと大豆を世界に輸出しています。しかし、セラードの耕地化は水資源や生物多様性を損ないました。

 

人類はその誕生以来、飢餓状態を恐れ、食べる欲望に抑制のスイッチを欠いている。そこで番組が示した解決策は3つです。土地の伝統的な農作物・食文化を回復する。貿易による「食の分業」システムを適切に利用する。持続可能性を基準にした新しい技術を求める。

 

****

 

フィリピンのGMO(遺伝子操作された)作物反対運動について、FPの記事を読みました。Nick Aspinwall, Why Is the Philippines Blocking ‘Miracle Crops’? FP JUNE 13, 2024

 

ジェームズ・スコットの名著『反穀物の人類史』を読みました。

 

NHKスペシャルが言及したように、戦争や大規模な流通、国際貿易・開発援助が「食の単一化」を進めた要因でした。解決策は、管理下の飽食と過剰な刺激を嫌う人々が国家から離脱することです。分散して暮らす、豊かな集団の平和、長寿と人口減少、自然の回復を人類は楽しみます。