戦争、外交、関税、補助金、気候変動、技術革新、核兵器、産業政策、国際秩序、通貨・為替レート。エコノミストたちは、習慣的に、そのつながりを軽視します。ただし、紛争が起きるまで。

 

アメリカも、ロシアも、ヨーロッパも、産業政策を見直しています。巨大な市場規模や、先端的な技術開発のための研究支援、起業と資金提供、多様なサプライ・チェーン、など、世界の数か所、数か国(グループ)しか、競走に生き残れないと思います。

 

日本はこれからも、地理的に中国と、政治文化的にアメリカと結びつき、歴史的にアジアの文化圏を基盤とするでしょう。台湾、朝鮮半島にも共通する問題です。ここから離脱することはできません。

 

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ウクライナの停戦合意が、新しい国際秩序の始まりになるでしょう。ロシアと中国の産業・通貨が統合化を深めています。

 

ANDERS ÅSLUNDが説くウクライナへの全面支援か、RICHARD HAASSが説く停戦合意か。その主張は、いずれも拒否できない、深刻な重さを持っています。

 

しかし、何度か失敗するとしても、戦争は終わるしかありません。新しい冷戦、あるいは、コールド・ピースです。マクロン大統領の警告に、フランス国民が示す関心は低いかもしれませんが、日本人は自分たちの脆弱さを知るために、聴くでしょう。

 

Stephen M. Waltは、K. ウォルツの考察を、イランの核武装に向けて想起させます。核兵器は、中東のような戦争に引き裂かれた世界に、国際関係の「安定」をもたらす、と。

 

相互利益や理想主義ではなく、地域大国の「相互の恐怖」が均衡をもたらします。そして、戦争を確実に回避できるなら、コールド・ピースは地域の安定と繁栄に資するはずです。

 

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ガザ戦争と国際刑事裁判所ICCの権威が高まることで、異なる国際秩序が始まるかもしれません。ICCによる人道に反する罪の告発を、諸大国が尊重して行動します。

 

国境を越えた軍事力の行使、民間人の殺害を回避し、内向きの社会統合、結束と自律性強化に向けた、グローバリゼーションの逆転を組織します。

 

気候変動への技術革新、補助金をめぐって、マクロンは米中の和解をもとめるヨーロッパ外交へ舵を切ります。

 

高齢化、年金・医療革命、移民に関する合意が、各地のスタンダードとなり、競争的な企業や雇用を促します。

 

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政治家が厳しく問われるのは、若者の戦死、老人の年金、孤独死、ではないか。安全保障と、通貨政策、産業・地域政策によって、応えなければなりません。その過程で、相互依存関係を許容できる諸国との政治経済同盟とその再編が、地政学を動かします。

 

各地の政治経済モデルと通貨や貿易を介した調整メカニズムの変容は、これからも続くでしょう。トランプの2度目の当選は、アメリカと世界にとって、その性格を変えるはずです。

 

定年退職後、病気などで貯えが尽きれば、年金だけの暮らしです。食費を切り詰め、孫のおもちゃを買ってやりたい、と、珍しく、商店街を歩けば、突然、威嚇するように通り過ぎた男たちから罵声を浴びる。

 

・・・「お前らのせいで税金も保険料も高い。」 ・・・「だれのお金で暮らせてるのか。」 ・・・「はよ、死ね!」